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 BLACK OR WHITE? エピローグ 〜Girl's Side〜 

「さて。じゃあ今日は、バイトの時間までどうしようかな〜」

うーんと伸びをして、アタシは少しだけ息をついた。
まとまりそうでまとまらない、あの不器用カップルと話してると、疲れはしないけど焦れったくなる。
どっちかってゆーとアタシもせっかちな方だから、もういっそバラしたい気分になることもあるけど。
それでも、簡単に信じたりはしないんだろうなあ……と思う。
人間、倖せな方の話を信じたがる人種と、その逆の人種がいるのかもしれない。

そんなことを考えながら、自分も靴を履き替えかけた時。

少し、お時間を頂いてもよろしいですか」

ぎく……、と、自動的に体の動きが止まった。
この声は。あんまり会ったことないけど。例の。理事長の。
秘書だったか助手だったか重役だったか?

「天之橋理事長の、社の方の秘書をしております、榊と申します」
「…………はぁ」

心を読まれたかのようなタイミングに、気の抜けた返事が洩れた。
なんでか知らないけど、この人は苦手だ。ほとんど会ったことはなくて、話したことは皆無だけど、なんとなく本性を隠してるカンジがする。
なんか、こう……理事長と一緒のを、あからさまに「お嬢様」「お嬢様」って呼んでたとことか……普段そんなことしそうにないのに、わざとらしくに優しくしてたりとか……その辺がイメージに合ってないと思う。
いや、そんな親しいワケじゃないから誤解かもしれないけどさ。

「……なんか用ですか?アタシ、もう帰るとこなんですけど」

とりあえず言うと、例の一見優しそうな笑みが一礼とともに降ってきた。

「お手間を取らせて申し訳ありません。手短に言いますが、少しお嬢様のことを教えて頂けませんか」
のこと?」

一瞬、自分でも思い切り不審そうな声が出た。
相手は全く動じない。

「もちろん、プライバシーに関わることは結構です。藤井さんが話しても良いと思うことだけで構いません」
「……なんでそんなこと訊きたいの?」
「基本的な情報を持っていないと、対策が立てられませんので」
「対策?」

問い返してすぐ、意味が分かった。
つまり、あの二人をまとめるのに、の好みとか傾向を知っておきたいと言うこと?

「……ああ、なるほど。さてはさっきのアレも、アンタが?」
「まあ、そんなところです。あれだけ守備範囲の広い遊園地なら勧めても問題はありませんが、他もそうとは限りませんし」
「……なんかちょっと、疑問なんだけど。
 普通さあ、シャチョーがジョシコーセーと火遊びっていったら、止めない?なんでそんなに協力してんの?」

周りに人気がなくて嫌だなーと思いつつ、アタシはできるだけ余裕に見せて腕を組んだ。
とりあえずなんとなく、退路も確認してみる。

「あの方の性格からして、そんな遊びが出来るとは思えません」
「……まあそりゃ、そうだけど……」
「秘書の仕事は、業務の補佐だけではありません。仕事に専念し、能力を十分に発揮できるようにするのも仕事の内です。
 休日の行動如何によって、次週の執務能率が変わってくるとなれば、私としても手を出さざるを得ませんので」

リジチョー……そんなことまでバレバレの社長ってどうなの?
他人事ながらなんかもう恥ずかしくなってきたアタシは、分かったとばかりに頷こうとして。
ふと、思いついて呟いた。

「……え、じゃあ。もし、が仕事の邪魔になるようになったら、アンタはどうするワケ?」
「………………。」

無言のままの笑顔が怖い。
こ、こいつ、ウカツに味方だと思ったらエラいことになるかも!?

「あのコになんかする気なんだったら、協力なんてしないよ!」
「………では、藤井さんはどうですか」
「ハァ!?」
「会長の存在がお嬢様のためにならないと、明らかに確信できるようになった場合、『何かする気』にはなりませんか」
「………………。」

にこにこと優しそうな笑みを向ける相手と、しばしの間睨み合って。
結局、アタシは深いため息をついた。

「……じゃ、ホントに差し支えないことだけ。あと、分かってると思うけど二人にはぜったい内緒ね」
「心得ております」
「あと、アタシはアンタのことぜんぜん信用してないからね」
「心得ております。では、立ち話もなんですのでお茶でもご一緒しますか」
「いや、いい!缶ジュースとベンチでいい!」
「承知致しました。では、どうぞ」

笑顔を崩さず、さっさと校内の休憩スペースに向かって歩き出す後ろ姿を見て。
気が抜けないよ〜と心の中で叫びながらため息をつき、アタシはもう一度、靴を上履きに履き替えた。

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