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 BLACK OR WHITE? 2 

「………いいなあ〜」
「!?」

するっと後ろから廻された手に、彼女は一瞬びくりとして。
それから、肩越しに後ろを見てほっと息をついた。

「な、なんだ……びっくりするじゃない、なつみん」
「アタシが分からないなんて、まだまだ修行が足りないねー」
「そんなの分かるわけないよ。どしたの?一緒に帰る?」
「……………。」

途端に物言いたげな様子を少しだけ見せた彼を、楽しそうに見て。
奈津実は小さく首を振ると、彼女の肩に顎を乗せた。

「いいないいなー。アタシも行きたいよ、あの遊園地」
「ふ……藤井くん、いつから聞いて」
「なんたって今一番人気のスポットでしょ。オープン前に行けるなんてこの倖せ者〜!」
「あ、そういえばなつみん、ずーっと行きたがってたもんね」
「そうだよ!めちゃめちゃ待ち遠しくて夜も眠れないってのに、アンタばっかりズルイ〜」
「じゃあ、なつみんも行く?」

「「は?」」

もぐもぐと何か呟いていた彼と、それを承知で無視していた彼女の台詞が、オーバーラップした。
少女は不思議そうに首を傾げる。

「は、って?行きたいんでしょ?もし招待券に余裕があったら、天之橋さんにお願いしてみれば?」
「……アンタねえ。アタシにひとり寂しくハブられろってゆーの?」
「もー、そんなことしないってば。じゃ、なつみんも誰か誘えばいいじゃない」
「誘う奴なんていないもん」
「うそうそ。誘ったらきっと喜ぶよ〜。コースター類を全制覇して乗り倒すって、今から計画練ってたもん」
「……そういうことだけはほんっと、マメだよねえ」

わざとらしくため息をついて、奈津実は彼女越しに天之橋を見た。
ここで『アタシも行っていいですかー』と聞けば、彼はきっと嫌とは言わないだろう。
かすかに複雑そうな瞳をしながら、『もちろんだよ。人数が多い方が楽しいからね』くらいは言うに違いない。
本当にオープンを心待ちにしている遊園地だし、ついていって二人で騒いでへたれる理事長を見るのも楽しいかと思ったけれど、結局奈津実はそれを断念した。

「アタシは遠慮しとく。どうせあと半月でオープンだし。連休の混雑の中を練り歩くのも醍醐味だし」

正確には遠慮ではなくて、無意識にラブラブ光線を出す二人に当てられるのもバカらしいと思ったから。
なのに。

「え、なんで?人数多い方が楽しいじゃない」

アンタがそれを言うか!?

苦虫を噛み潰したような顔をして、奈津実は下駄箱の陰に少女を引っ張り込んだ。

「アンタね、一体どーゆーつもり?」
「え……えっ?」
「デートにマジで友達を連れてく女がどこにいんのよ!」
「で、デートって……そんなんじゃ」
「あああああもう〜!アンタがそんなんじゃなくても、相手は違うんだって!」
「そんなことないよ!だって、天之橋さんだって絶対、人数多い方が楽しいって言うもん!」

むっとして反駁する彼女に、脱力する。
そりゃ、アタシだって言うだろうとは思ったけど……。
口でどう言っても、あんなあからさまな本心が見えない訳はなくて。
それが分かっていないのは多分、本人だけ。

「……じゃあ、なに?アンタは二人で行くより友達コミで行く方を選ぶわけ?」
「そ……それは」
「向こうから誘ってきたんでしょ、この機に乗らないでどうするよ!?」
「な、なつみん!聞こえるってば!」
「知らないよ!とにかく、アタシは行かないからね!もーバカらしいっ」

言いたいだけ言うと、奈津実は少女を引きずって、彼の背中と一緒に昇降口に押し出した。

「はいはい、後の話は二人仲良く下校デートしながらしてねー。ばいばーい」
「なつみん!……もうっ。天之橋さん、行きましょう!」

拗ねたように顔を背けて、足早に出て行く彼女をちらと見て。
天之橋は、少女に聞こえないように小さく囁いた。

「……すまない、藤井くん。気を遣わせてしまって」
「別にいーです。それよりちゃんとデートにして下さいね?仕事とかしてたらダメですよ」
「分かっているよ」
「あと、これは貸しですから」

恩着せがましく言われる台詞に、苦笑が浮かぶ。
小さく肩をすくめてから、彼は奈津実の頭にぽんと手を置いた。

「分かった。では、次までに考えておきなさい」
「……………。」
「君も気を付けて帰るんだよ?もし何かあれば、すぐ連絡するように」

それだけ言って、手を挙げて歩いていく彼を見送って。

「……あれがなきゃ、だってもうちょっと分かるかもしれないのにねー……」

奈津実は生温く笑ってみせた。

FIN.

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