つきんつきんと、絶え間なく襲う痛み。
腰のあたりには、鈍い違和感。
そして、頭がぼーっとする貧血と情緒不安定。
そんな症状が重なって、生理中の少女は特に夢見が悪くなる。
悪いと言っても、常に悪夢というわけではなく、時にはいい夢や楽しい夢もある。
だが、いつも。いつも、なにか、変なのだ。
それは、まるで映画を見ているかのようにリアルで。
主人公は、決まって自分。
だけど、主人公の自分のお話を、観賞してる自分もいる。
そして、観賞している自分がふと思ったことが、そのまま現実になってしまう。
つまり、登場人物としての自分と監督の自分がいて、登場人物の自分は監督に見られていることに気づいていない。
それを観賞しながら、『次はこうしたら?』と思う、監督の自分。そしてお話は、思った通りに進んでいく。
それだけなら、いつもいい話にできるはずなのだが、この監督の選ぶ話が、普段の少女なら絶対に選ばないようなストーリーで……いつも疲れたり、恥ずかしくなったりする。
この時の夢もそうだった。
夢の中で、少女はなんとクラスメイトの葉月珪と、抱き合って…いた。
「……迎えに来たんだ」
小さく、だがしっかりとした口調で、葉月が呟く。
彼の背中に回された自分の手が、きゅっと服を掴む。
『や、やめて!』
登場人物でも監督でもない自分が、叫ぶ。
しかし、登場人物の自分はなんだか嬉しげで。
監督の自分は、それを見て満足そうだった。
葉月が、自分の顔を上向かせた。
「……愛してる」
クラスメイトの彼には見たことのないような、深く優しい微笑み。
笑ったらこんな顔になるんだ……、と、一瞬見とれたとき。
監督の自分が、何か考えたのがわかった。
ここに……
『!嫌だ、やめて!』
少女は必死に、監督の自分を止める。
いま、天之橋さんが……
『嫌だってばあ!私、好きじゃないよ!やめて珪くん!』
来たら?
「「」」
唇が触れる瞬間、葉月が呟いた愛しさと。
少し離れたところで、彼が呟いた衝撃が。
重なった。
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