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 You're my only shinin' star 2 

「零一さんっっ早く〜〜!」

祭囃しに急かされた彼女が氷室を振り返り、団扇で手招きする。
「………。」
いつもなら彼女が小走りでちょうどいいくらい足早な彼が、今日は別人の様に足が進まない。
彼女は痺れを切らし下駄をからころ云わせて駆け戻ってきた。

「零一さん、おそいっっ!!」
「……何故こんな恰好をしなければならないのだ。……こんな所を生徒に見られたら……」
出掛けに彼女に『せっかく買ったのに』と泣かれかけて、ついその浴衣に袖を通してしまった事を、彼は今後悔していた。
大きな祭りだからきっと受け持ちの生徒も何人か来ているだろう……。
新学期の事を考えてため息をつく彼に、彼女は悪びれた様子もなく言う。
「大丈夫!大和民族の伝統衣裳じゃないですか。それにとってもキ……」
危うく言いかけた言葉を呑み込む。
以前、お風呂上がりの彼の濡れた髪を見てうっかり言ってしまった夜、彼は口を聞いてくれなかったのだ。
衿足や細い首、肌が白いからすごく華奢でキレイなんだけどな……彼女は心の中で呟いた。

「ま、まぁ、ほら細かい事は忘れて、ね?」
「民族衣裳と言えばそうだが……しかし、首と脚が涼しくて落ち着かない……」
いつもスーツの彼には無理もないだろう。しかし彼女の次の言葉でそれらは全て吹き飛び、氷室は血相を変えた。
「なぁんだ、それくらい。私なんか下着もつけてないんですから〜」
「なんだと?!……帰るぞ。」
来た道を戻りかける彼の腕を慌てて引っ張って、引きずられながら彼女が訂正する。
「うそです〜冗談ですってば!正式な着付けはそうなんですけど、私はちゃんとつけてますっっ」
「本当だろうな?!…まったく君は…」
お説教が始まりかけたのを察知して、慌てて彼の背中に廻り、祭り会場に足を向けさせた。
「まぁまぁ、早く行きましょ、ねっ

たくさんの夜店に目を輝かせ、片っ端から覗いてまわる彼女に連れられて、アイスクリームを買い、わたあめを買い、フライドポテトを買い……
「零一さんかき氷食べたい!」
「もうダメだ!腹を壊すぞ。」
「これで最後〜!ね、おねがい!」
こういう事は絶対に引かない彼女との押し問答を恐れて、彼はため息をついて夜店に入る。
いちごミルク!とはしゃぐ彼女がこれ以上何かを欲しがりだす前に、足早に夜店の並ぶ通りを抜ける。

「これで最後なら、ここにはもう用はないだろう?」
名残惜しそうに夜店を振り返る彼女の手を引き海岸に着くと、すぐ側で轟音が鳴り響き、夜空に大輪の華。
「うわぁ…キレイ…」
人影のまばらな林の入口に落ち着くと、彼女はそのまま時を忘れた様に見入り、やがて最後のひときわ艶やかな華を見送った。

「先生、ありがとう。…一緒に来てくれて」
彼が少し困った顔で彼女を覗きこむ。
暗闇の中で少し沈黙した後、彼が、空との境界がにじんでしまった海を見ながら言った。
「……杏里。君の望むことなら、君の笑顔が見られるなら何でもしよう。……君が、私の信じる唯一の奇跡だから……」

静かになった夜空には琥珀の月が明るく出ていて。
でも、二人の影が重なるとそれは雲に隠れてしまった。

 

FIN.

 

 

「いやぁ〜あっつぃなぁ〜。」

「っ!!」
「姫条くん!?」
暗闇の木立の中から聞き覚えのある関西弁。氷室が凍りつく。
「唯〜愛!」
「なっちん!!」
その組合せに氷室は頭を抱えた。
「や、やだ…いつからいたの?」
「ずぅっとおったで。コイツと花火見に来たら、唯愛によう似た女の子おったから、あと尾けてん」
「唯愛、他の男と来てる〜って思ったよ!……まさか先生が浴衣着て?こんな人目のあるトコでチュ〜してると思わないからさぁ?……あり得ないよねぇ〜!!」
キャハハ、と笑うなつみと姫条に、氷室が向き直った。
「こ、これは民族衣裳だ。日本人が着ておかしい事はない!そして唯……彼女は、私の……妻だ。一緒に来て何か文句があるのか?」
「いやいやセンセ、そないこわい顔せんといてぇな。邪魔するつもりやないんやから。」
充分邪魔だと言わんばかりの彼になつみと姫条がせーの、と声を合わせた。

「オレら……」
「結婚しま〜すっ

一瞬、二人はポカンとし、次の瞬間彼女が飛び上がって手をたたいた。
「ウソ!やだ、ほんとに?!すごーいっ!おめでとうなっちん!!」
「えへへ、ありがと
「……姫条、君は定職に就いているのか?!生活はちゃんと……まさか?!」
「ちょっ、ちょっと待ってぇな、ちゃうねん!オレなバイト先の正社員になって、今、主任やねん。コイツもこの春からマネージャーに昇格してな、将来の見通しついたからってコトで……」
「そ…そうか。それならば、まぁ……おめでとう、幸福を祈る。」
「おおきに!ほなオレらはこれで。」
「唯愛、今度遊びに行くからね!……新妻の心得、教えてね。じゃあね〜!」
「うん、またね〜!
 ……そっかぁ、なっちんも結婚かぁ……もうあれから三年もたったんだ。」
「あれから?」
祭りが終わって臨海公園にも人気がなくなり、シンとした駐車場に二人の下駄の音が響く。
「プロポーズ、されてから……零一さん、本当に……私でよかったの……?」
「私の目に間違いはない。……それから、今までもこれからも迷う事はない。他にどれだけの人がいても、私の傍には君だけだ。」


彼がこんな言葉をくれた事は、私とお月様だけの秘密。

ブラは着けてるけどパンティーは穿いてないのは……私だけの秘密。
 

FIN.

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