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 ラヴィアンローズ 2 

毎日、いつもより早く帰って来る。
口数も、食欲もめっきり減り、俯きがち。
話しかけても生返事が返ってくるだけ。
母親は大きくため息をついた。
「何だって言うのよ?あんたらしくもない……西九条家に入るのがこわい、なんていうタマでもないし」
「……………。」
「明日になればお迎えが来るのよ、荷作りは済んでるの?
 まぁ、着物は何百着も用意してると思うし、ほとんど持ってく物も無いんだろうけど……」
「……ママ、ごめん……晩御飯いらないから。部屋にいるね。」
「あら、やだ。せっかく三月さんの味を覚えててもらおうと思ってあんたの好きなもんばっかり作ったのに。」
心配してくれる母親とも、しばらくは会えなくなる。
キッチンを横切って二階に上がる前に、大好きなポテトグラタンが湯気を立てるテーブルに目をやって、何とか一言だけ母親を気遣うことが出来た。
「朝、食べるから……ラップして置いといてね。」
笑って言うと母親は安心したように『あんたの分まで食べちゃうから。』と憎まれ口を言った。


部屋に入るとふわり、と薔薇の香り。
日当たりのいい出窓に、とっておきの花瓶に生けられたその華は五日たっても咲いている。
一日一日開いていくたび、香りが部屋中に広がって。
「……天之橋さん、みたい……」
優しくて、甘くて、包み込むような彼との共通の時間を、あの日からは持っていない。
もう一度、あのドアをノックして。
彼がいつものように微笑って。
『やぁ、来たね。お嬢さん』
その声を聞いてしまったら、きっと、泣いてしまう。
彼の立場も迷惑もかえりみず、打ち明けてしまう。
自分の身勝手な片思いで彼を困らせることは、このまま離れることよりも嫌だった。

離れてしまうことは、すごく辛いけど。
でも……仕方がない。自分で約束したことだもの。
そりゃあ一年も早まったのは予想外だったけど、でもおばあさまをお見送りに出たとき、車には白衣の女性が乗っていた。
きっと、そんな素振りを見せないけれど、お身体の具合は本当に良くなくて。
今、わたしがわがままを言えば、おばあさまはもっとお悪くなるかも知れない。
たとえおばあさまが来なくても、一年後にはこうなる事はわかってたんだもん。
実らない恋を終わらせるのは、早い方がいい…

 

◇     ◇     ◇

 

「では、君に任せるから。まぁ会食をして雑談するくらいだからたいした事は無いと思うが、何かあったら連絡してくれ。
 ……くれぐれも、私は少し熱があるだけだ、と言って。見舞いになど来られたらサボっているのがばれてしまうからね。」

もう三度目のその言葉に、有能な片腕は少し微笑って、また承知してくれた。
本当は、少女との約束は夕方なのだけれど、あの日以来彼女は日課のようだったお茶会に来なくなった。
たまに見かけても笑顔ではなく、塞ぎ込んでいるようで。
体調でも悪いのだろうか、しかし学校には毎日来ているし……悩み事でもあるのだろうか……そうだ、行きたいと言っていた植物園に誘ったら。そう考えつくと居ても立ってもいられなくなった。
ハンドルを握りながら、何故かアクセルをいつもより踏み込んでしまう。

早く行かないと、どこかに出掛けてしまうかも知れない。感じる胸の焦燥感はその考えからだと思っていた。

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