「あー…ねみー…」
思わず、そんな呟きが出てしまう。
小さな天窓からは、早朝の光が見える。5時くらいだろうか。
俺は乱れた髪をかき上げ、体に巻き付いたブランケットを引きはがし隣で眠る彼女にそれを掛けた。
「……まぁた、ぐうぐう寝てやがる……」
その寝顔は、昨日と同じく無邪気で。
ほんのさっきまで、俺に陵辱されて喘いでいた女とは別人のようだった。
くつくつと、俺は笑う。
彼女を手に入れたことが嬉しいなんて思うような、ロマンチストではないけれど。
今、この時に、彼女の寝顔を見ているのが俺であることが可笑しかった。
「おい、こら。……こないだまで高校生だった未成年に手を出すなんて、俺の人生で初めてだぞ?」
少し低い鼻を、指ではじく。
「軽い大人のレンアイが、俺の信条だったんだけどな。……たぶん、他の女と寝たら泣くんだろうなぁ……」
生活習慣を変える必要があるようだ、と。
思ってしまうことさえ可笑しい。
女にあわせて生活を変えるなんて、考えもしなかった俺が?
たかが18の小娘を、泣かさないように?
ガキのような生ぬるいレンアイを、しようとしているなんて。
「ま・仕方ないよな。おまえが俺に飽きるまでは、せいぜい付き合ってやるさ」
惚れた方が弱いのは当たり前だからな、と心の中で呟いて。
真綿のような彼女を、抱きしめる。
「なるべくなら……大人になったおまえの好みも、俺であってくれればな」
彼女は、18の子供で。
だからこそ、大人の俺に惹かれていることは知っていた。
けれど、俺が彼女に惚れてるのは……彼女が子供だからじゃない。
彼女が、大人になったとき。
俺は彼女の“好き”の地位を、維持することができるのだろうか?
分からない。
でも。
彼女に、彼女が選んだ俺以外のパートナーが現れたとき。
俺は笑って、そいつに彼女を譲ることができる。
それだけが、親友から彼女を奪った俺の、唯一のケジメだから。
そして……それ以外では絶対、彼女を離さないことも……。
「……要するに、これは……ベタ惚れ、ってやつだな」
耳になじまない言葉は、自嘲とも微笑とも思える。
俺はねむるために、目を閉じた。
「せいぜい、努力するさ……未来のおまえのために」
腕の中のぬくもりを、失くさないために。
FIN. |