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  MN'sRM > GS別館 > GS1創作 > 天之橋・約束シリーズ1 >

 ロマンスの神様 3 

ケータイを閉じ、奈津実は後ろを振り向いた。
「みゆう」
うつうつと眠り込みそうな少女に、小さな声で言う。
「理…じゃない、アンタの彼氏、すぐそこまで来てるって。帰るよ」
「うぅ〜ん……」
ぐずる少女を他の皆に気づかれないように、引きずるようにして店の外へ連れて行く。

「ほら、しゃんとして!理事長にそんなみっともないとこ見せてもいいの!?」
そう言うと少しだけ、少女の意識が戻ってきた。
「ん……うん。ごめん……なつみん……」
「いいから」
芯の通らない体を抱え直したとき、見覚えのある車が近づいてきた。

「水結!」
急いで車を降りる彼に、奈津実はほっとして少女を渡す。
「あ〜、待ちくたびれましたよ、理事長。確かにお渡ししましたから」
「ああ、すまないね藤井君。迷惑を掛けてしまって」
親友のことで謝られると、変なくすぐったさを感じる。
奈津実はそんなことを考えながら、手を振った。
「いーえ。気持ち悪いとかはないみたいなんですけど、眠いみたいで……」
その時、ぼーっとしていた少女がふと、瞳を上げた。
「あっ…天之橋さんだ〜
自分を支える人物を見て、にっこりと微笑む。
「大丈夫かね?」
尋ねると、少女は片手を思いっきり上げて答えた。
「はぁいっっ、もちろんですぅ〜♪」
「……あまり大丈夫でもないみたいだね」
彼の言葉に、奈津実がうんうんと頷く。
「なんですかぁ、だいじょうぶですよぉ〜。
 ん……天之橋さん……」
「なんだね?」
「………だっこ。」
いきなりの言葉に、天之橋は絶句し、奈津実は小さく吹き出した。

大通りに面している飲み屋の前。9時を過ぎたばかりで人通りは多い。
しかも、天之橋には話していないが、きっと少女を狙っていた男どもが店の中から見ているはず。
さて、少女のおねだりに、天之橋はどう応えるのだろうか?

「み……水結?」
「ヤダ、だっこ!」
幼児のようにだだをこね、少女は据わった目を彼に向けた。
「だっこしてくれないと、わたし、うわきしますよぉ〜!」
酔っぱらい特有の大声で叫ぶ。
奈津実は今度こそ、腹を抱えて笑い出した。
「くく……苦しっ……。り、理事長〜?みゆう、コンパで男子にターゲットにされてましたからね。
 浮気相手には困りませんよ?」
笑いすぎて涙を流しながら、焚きつける奈津実に。
天之橋は一瞬眉をひそめ、ため息をつくと、ひらりと少女を抱き上げた。
声にならない声が、店の中から聞こえる。

「うふふ だっこだっこ〜
「ではね、藤井君。酔っぱらいがこれ以上なにか言い出す前に、帰るよ」
少しだけ照れた声音の彼に、少女は腕を回して抱きついた。
「う〜。ぁまのはしさぁん……」
だんだん、呂律の回らなくなる口調で。
それでも、しあわせそうに。
「……せかいでぃちばん……だぁいすきー……」
「………」
天之橋と奈津実は、思わず顔を見合わせて。
同時に、苦笑した。

「トクしましたね。普段聞けないホンネが大胆に聞けて」
おかしそうに呟く奈津実に。
「本当だね。多分、明日には忘れているんだろうけれど」
天之橋は、苦笑を極上の微笑みに変えた。
「私も君が好きだよ?……私の大事なお姫様」
聞いている方が、とけそうな声で。
すでにまどろみに入ってしまった眠り姫の頬に、優しい甘いキスを落とす。

あの……理事長?

奈津実は赤面して目をそらし、心の中で呟いた。

だっこよりもそっちの方が、だいぶん恥ずかしいと思うんですけど……?

自分がされているのでなくてもその場にいるだけで、奈津実はむずがゆくなる気持ちを抑えることはできなかった。

FIN.

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