「 じゃあ。俺の考えてることを教えようか?」 
 
少しだけ下がった声音。 
えっ、と見返す少女の腕を放し、カウンターから出て、彼女の横に立つ。 
「俺がいつも、何を考えてるか。みゆうちゃんは知らないでしょ」 
いつもみたいに笑う、表情が。 
なんとなく、いつもと違うように見えた。 
 
「え……あ、あの……?」 
蛇に睨まれたカエル? 
そんな言葉が、脳裏をよぎる。 
義人はちらっと周りを見渡し、かがんで少女の耳に口を寄せた。 
「例えば……。こういう所が気になる、とかさ」 
ブラウスの、少しだけ開いた胸元をつっとなぞる。 
ぴくっと反応して、少女は目を見開いた。 
「こんな格好をして、俺を誘ってるの?……とか」 
他の客に見えないように、短いスカートの上から腿に触れる。 
「俺がいつも欲情してるの、知らないでしょ?」 
「………!」 
硬直してしまった少女に向かって、やっぱりにこにこと笑いながら義人は続けた。 
「例えば、さ。ここでいきなり、服を脱がしたらどうするんだろう……とか」 
少女は我慢できずに目を閉じた。囁かれているだけなのに、本当に脱がされているような感覚に陥る。 
「お客さんとか、みんな見てる前で……シャツのボタンを外されて。 
 下着も剥ぎ取られて、かわいらしい胸がすぐ、つんって反応するんだよね。みゆうちゃんはいやらしい子だから」 
「やっ……」 
小さくうめいて、思わず胸の前で腕を組む。 
その体は多分、彼の言ったとおりに反応してしまっているのだろう。 
義人はわざと耳に息を吹きかけながら、涼しげな笑顔のまま少女の耳を犯す。 
「スカートに手を入れたら、もう、ぐちゃぐちゃで。内股にまであふれてて。 
 そこをかるく撫でるだけで、イキそうな声をあげて」 
「ぁ……っ……」 
「指を挿れたら、早く早くって……ぎゅうぎゅう締め付けてきて。一本じゃ全然足りないって、我が儘を言うんだ」 
義人の手が、腿から膝にかけて、ゆっくりと往復する。 
それだけで、少女の体はかすかに震え出した。 
「こんな、他人がいる所で。俺のが欲しいって、泣いてねだるんだろ?」 
義人の口調が。 
だんだん、彼女を陵辱するときのものに変わる。 
「んふ…っ、ふっ……」 
呼吸が荒くなるのを感じながら、少女は息を詰めて耐える。 
今、しゃべったら。とんでもないことを口走ってしまいそうで。 
「我慢できない、もう挿れてって、泣き声を出して。 
 おもらししたみたいになってるアソコに、俺のを 」 
 
 
「すみませーん!コーヒーひとつ、追加してもらえますか?」 
 
 
少し離れた席から、掛けられた声に。 
「は〜い。ちょっと待っててね?」 
義人はがらりと口調を変え、いつものように愛想良く笑った。 
客にそう答えてから少女に向き直り、 
「子供扱いされたくないなら、そうしてあげてもいいけど?」 
軽い調子で尋ねると、少女は俯いたままぶんぶんと首を振った。 
「そう?残念」 
くすくす笑いながら、体を起こす。 
「俺はいつも、そんなことを考えてるんだからね。下手なこと言ってると、襲うよ?」 
「は……ハイ」 
「うん。いい子だ」 
縮こまって返事をする少女の頭を撫でた後。 
彼は、カウンターへ戻るために振り向きざま、もう一度口調を変えて囁いた。 
 
「ご褒美に、客がいなくなったらシてやるから。大人しく待ってろ」 
「………!」 
 
過敏に反応する少女に、口調を戻して、 
「それとさ。ひとつ言っておくけど、手帳落とした人ってさ」 
にこ、と人なつっこい笑みを浮かべた。 
 
 
「 男だよ?」 
FIN.  |