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 未来予想図 4 

「どうして、これを天之橋さんが持ってるんですか!?」

目を丸くして驚愕している彼女に、天之橋は肩をすくめた。

あの出来事が原因で避けられているのかもしれないと、それは考えていたのだけれど。
まさか、全く覚えていないせいで指輪を探しているとは思わなかった。
しかしそれを忘れているのならばきっと、自分が言ったことも覚えていないだろう。
彼女が心の中で考えていて、そしておそらく告げるつもりのなかっただろうそのことを、どう説明すればいいのか。

「………何も覚えてないのかね?」

とりあえず、念のため確認してみて。
意味が分からず戸惑う姿に思わず相好を崩しながら、天之橋はわざとらしくため息をついてみせる。

「君に、突き返されたんだよ」
「は!?」
「もう要らないってね。あれは私も、かなりショックだったが」
「う、うそ!?嘘ですよね!??」
「おや、どうして嘘だと思うんだい?」
「だっ、だって……!」

おろおろと狼狽える少女に、少しだけ意地悪な口調でそう言ってから、天之橋はまたくすくすと笑った。

「いや、実は、ホテルから忘れ物として届けられたんだ。一度バッグをひっくり返したから、その時だと思うけれど」
「あ……」
「君が探しているんじゃないかと思って連絡をしていたのだが、電話にも出てもらえなかったから」
「ご、ご、ごめんなさいっっ!わたし……わたし、合わせる顔がなくって……」
「……そうだね」

かあっと頬を染めて、縮こまるように俯く彼女の手の中のリングを、天之橋はそっと取り上げる。

「君は一度、手放したからね。どうしようかな?」
「え、えっ!?」
「返して欲しいかい?」

こくこくと、少女は一生懸命に首肯する。
その勢い込んだ必死な姿に、微笑みを返して。

「じゃあ……今後は絶対に、ひとりで悩まないこと。なんでも話せとは言わないけれど、遠慮はいけないよ」
「は、はいっ」
「それと、二度となくさないように
「え?」

握りしめていた拳が、するりと持ち上げられて。
あの日と同じように、指に通される、冷たい感触。

こうして、ずっとつけていること」

零れそうに見開かれた瞳を、至近距離で見返して。
天之橋は無防備な唇にキスを落としながら、小さくそう、囁いた。

FIN.

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