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 OPEN YOUR HEART 1 

!!」

危ない、と思ったときには既に、体が前に出ていて。
咄嗟に少女を抱きかかえた瞬間、がつ、という鈍い音と共に体のどこかに痛みが走った。



「………………ぁ」

呆然とした声を出されて、我に返る。
慌てて、天之橋は腕の中に抱え込んだ少女を見た。

!怪我はないか!?」

地面に倒れ込み、尻餅をついたまま彼女の肩を揺さぶると、丸くなって固まっていた目が彼を捉える。

「あ……。あ、天之橋さんこそ!どこかに当たったんじゃないんですか!?」

逆に腕を掴んでくる彼女は、どうやら無事のようで。
ほっとして、天之橋はずれた眼鏡を直し、彼女に手を貸して起きあがらせた。

「いや、私は大丈夫だよ。君が無事で良かった」
「よかった……あ、ありがとうございます。当たっちゃうとこでした」
「ご、ごめんなさい!!」

貯水池の方から、小学生くらいの子供が数人、ばたばたと駆けてくる。
少し離れた所に落ちたラジコンの飛行機を拾ってやっても、それに手を出せないほどびくついている彼らに、天之橋は微笑みながら目線を合わせた。

「大丈夫、どこにも当たっていないよ。けれど、こういったものを人の多い所で飛ばしては危ないね」
「は、はい……ごめんなさい」
「これを飛ばしたかったら、そうだね。芝生公園の奥辺りに行くと良いよ。
 あそこは人があまり来ないし、広いから危険も少ないだろう」

そう言いながら飛行機を差し出すと、一番年長らしい子がおずおずとそれを受け取り、ぺこりと頭を下げた。

「周りをきちんと確認してから遊ぶんだよ?」

走り去る彼らに声を掛けると、少年達は手を振って応え、芝生公園の方へ消えていった。

「………ふわ〜」
「?」

気の抜けたような声を出した彼女を、ふと振り返る。
少女は感心したように首を傾げ、くるりと瞳を動かした。

「天之橋さん、まるで小学校の先生みたいですねー」
「……私は一応、教員免許を持っているんだが」
「うそ!??」
「いや、確かに随分昔に取ったきりの資格だけれど、ね」

目を丸くする彼女に苦笑してから、天之橋はさて、と言葉を継いだ。

「申し訳ないけれど、少し待っていてくれるかな?
 こんな泥だらけの姿では、お嬢さんをエスコートできないからね」
「え?……あ!」

笑って言うと、少女は初めて気づいたように自分を見下ろし、汚れたスカートを慌てて払った。

 

◇     ◇     ◇

 

まずい。

公園内に設置されている手洗所で、天之橋は小さく舌打ちをした。
手にしたハンカチには、赤い痕。
エアプレーンとは違い、しっかりした重さを支えるためのラジコン機体は頑丈に出来ていて、直撃した側頭部からは血が滲んでいた。
幸い、機体ではなく翼の先端が当たっただけなので大事には至らなかったが、頭の傷は血が止まりにくい。
すぐにばれはしないだろうけれど、拭いても拭いてもじわじわと滲んでくるそれを、長い時間隠し続けるのは難しいだろう。
まだここに来て一時間と経っていない。今日はこの後、並木道を歩いて植物園に行って、お茶を飲んで帰るはずだったのに。

「全く……運が悪いというか何というか……」
鏡を確認しながら頭の中で言い訳を考え、ため息をつく。

彼女にそれを悟らせないために、今日はもう帰らなければならないことが、どうにもやるせなかったから。

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