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 Are You OK? 2 

「学校の帰りならば……私の方が早いと思うけれどね」

一瞬、自分の口から出た言葉に驚いた。
次の瞬間、苦笑が漏れる。

「えっ?」
振り向いた彼女に、天之橋は胸ポケットから手帳を取り出し、一枚破って番号を書き付けた。
それを見つめる、戸惑いの表情。
「今後。そんなことがあれば電話しなさい」
「え、えぇっ!?」
渡された番号と、彼の顔とを交互に見つめて。
少女は一気に頬を染めて、ぶんぶんと首を振った。
「そ、そんな!天之橋さんをお使い立てするなんてできません!」
メモを突き返されそうな勢いの言葉に、笑って。
「いいんだよ。君が困っているかも知れないと思ったら、私は雨が降るたびに気が気ではなくなってしまうから。
 でも……もし迷惑なのであれば、返してくれて構わないよ?」
戯けて言うと、途端にぴたりと止む固辞の言葉。
どうしようもなく、俯いてメモを握りしめて。
少女は赤い顔のまま息をつくと、顔を上げて彼を見た。

「……迷惑じゃ、ないです。ありがとうございます……」
微笑まれる表情に、迂闊にも視線を奪われる。
「でも……お呼び立てするかどうかは、私の自由ですからねっ」
少女は照れを隠すようにそう言い、少しだけ躊躇って、『それ以外でも掛けていいですか?』と小さく訊いた。
天之橋の目元が、綻ぶ。
「ああ、いつでも掛けてくると良いよ。話せない時はそう言うから、遠慮せずに」
「あ、じゃあ!」
思いついたように叫んで、少女はごそごそと鞄を探って小さなメモ帳を取り出す。
「私のも、どうぞ」
書き付けて差し出されるそれに、咄嗟に反応出来なかった。
「……え?」
「私も、いつでも掛けてくださいね。お待ちしてますから」
にこ、と首を傾げられる表情に押されて、受け取る。
ピンクのペンで書かれた、番号。
自分がしたことと同じ行為の筈なのにどぎまぎするのは、彼女に打算がないからだろうか。
 
無意識にでも、理由を付けなければ行動できない自分と。
いつも素直な気持ちで接する、彼女。

場に沈黙が降りてきて、少しだけ気まずくなりかけた、そのとき。
また、彼女の様子がわずかに鈍った気がした。

今の会話から言って、自分が原因ではないようだけれど、と思いながら。
天之橋は他愛ない雑談をしながら、他の可能性を考える。
きゅっとシートベルトを握りしめている、掌。
それは、不快や悲しみや憂鬱ではなくて、もっと直接的なものを感じさせた。
そう。例えば……恐怖や怯えといったような。


「……あぁ」


思わず、呟きが漏れた。
成る程、そういうことか、と。分かってみれば、浮かぶのは微笑み。
『それ』は、土砂降りの雨にあまりにも調和していて。
いかにも女の子が恐がりそうなものなのに、思いつかなかった。

「えっ?」
突然あげた声に、少女はふと瞳を向ける。
天之橋は外を見ながら、独り言のように呟いた。
「そういえば、もうすぐ終わるんだったな……」
「?何が、ですか??」
不思議そうな彼女に、時計を確認してから尋ねる。
「今からだったら、少し遅くなってしまうけれど。よかったら二時間ほど付き合ってもらえないかな?」
「それは、構わないですけど……?」
「ショッピングモールに、新しい映画館が出来たのを知っているかい」
少女はふるふると首を振った。
「小さな映画館なのだけれど、他とは違う作品をいくつも扱っていてね。その中で少し惹かれた作品が、確かもうすぐ上映終了になってしまうんだ。
 雨も続くようだし、君さえ良ければ寄っていかないかと思って」
穏やかに微笑まれて、少しだけ考える。
それは、行こうかどうしようかということではなくて。
完全に屋内で、たぶん雨も雷も聞こえないし見えないだろうショッピングモール。
もしかして見透かされたか、と窺うけれど。

「うん?都合が悪いかね?」
気遣う視線に、慌てて手を振って。

大丈夫、よね。気づかれてないよね?

「いえ、行きたいです!」

本当に嬉しそうに答える。
眩暈のしそうな、この嫌な音と瞬く光から逃れられることに、安堵もするけれど。
平日の帰り道に、彼と思いがけないデートが出来ることの方が、嬉しい。

そんな彼女の笑顔を眩しそうに見ながら、天之橋はショッピングモールへの道を辿るべくエンジンをかけた。

いかにも自分の好みそうな映画が、そこで上映されていることを祈って。

FIN.

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