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 ボーイフレンド 2 

じゃあ、何?
 つまり、おかぁさんと天之橋さんは、同じ大学だったってわけ?」
リビングルームで、母親の淹れたお茶を飲みながら。
少女はどこか、気に入らない様子で言う。
「そう。天之橋君は私の一年年下で、私の親友と彼の友達が仲良かったから、時々飲みに行ったりね。
 なつかしいわー。十何年ぶりかしら?」
「………ふーん」
少女が反対側の天之橋を見ると、彼は可哀想なくらい緊張して汗を拭っている。
「でも。きみがはばたき学園の理事長をしていることは知っていたけど、まさかこういう形で再会することになるとは思わなかったわ。
 娘の彼氏、っていう役柄は、なかなか予想できないわよねぇ」
くすくす笑い、母親はこくんとお茶を飲んだ。
その言葉に、少女と彼が揃って赤面する。
「それにしても、天之橋君。きみ、ずいぶん老けたわね」
さらりと言われた台詞に、少女の方が驚いた。
「おかぁさん!失礼だよ!」
「い……いいんだよ。本当のことだからね」
少し落ち着いたのか、供されたお茶を手に取り、挨拶をして口を付ける。
「そうか。……君のお茶の腕は、水月さん譲りだったか」
「えっ?」
抗議を中止して彼を見ると、立ち上る香気を味わいながら、天之橋はどこか懐かしげに言った。
「学生時代、君のお母さんは紅茶好きで有名だったよ。
 その頃はまだ、ティーインストラクターなんていう資格はなかったけれど、もしあれば一級は間違いなかった。
 ……君が淹れる紅茶も、それに劣らず絶品だからね」
そう言って微笑んだ、彼に。
母親は肩をすくめて茶々を入れた。
なんて、たいしたことないわよ。この子の腕なんて高校一年の時からの付け焼き刃だもの。
 ローズティがどうしたの、アールグレイがどうだの。毎日毎日お茶淹れまくって、あれで上達しなきゃおかしいわ」
「お、おかぁさんてば!よけいなこと言わないで!」
「きみの舌も、感度落ちたわね。それとも、それが愛情のスパイスってヤツかしら?」
「おかぁさん!!」
思わず立ち上がった、少女の横で。
天之橋は紅茶を気管に流し込み、咳き込んだ。
くすくす笑いながら、母親はトレイに乗せたティーセットを娘に差し出す。
「じゃ、。立ったついでにお代わり淹れてきてくれる?お手並み拝見!」
「…………」
むっとして黙り込んだ少女は、しかし素直にうなずいてキッチンへと立っていった。


「それにしても。水月さん、変わりませんね。いや、大学時代より若くなったような……」
「あはは。あの頃はちょうどが産まれたばっかりで、女捨ててたよね」
「お子さんがいらっしゃるとは思っていませんでしたよ」
ふっと笑って、天之橋は膝の間で手を組んだ。
「その……今更こんなことを言うのもなんですが……」
のこと?」
見透かすように首をかしげた彼女に、うなずいてみせる。
「あなたと同じ時期に大学に通っていたような男が、お嬢さんを下さいと言うのも……
 申し訳ない話なのですが」
「そうね」
やはりさらりと、彼女は言う。天之橋の瞳が真剣さを増した。
「……私は、けしていい加減な気持ちでこんなことを言っているのではありません。
 その……どうしても、彼女の存在が必要なんです」
「そうらしいわね。でも」
かちゃりとカップを置いて、彼女は天之橋を見た。
「それはこの際、どうでも良いのよ。親にとって大切なのは、が選んだのがきみだということ。
 を倖せに出来るのはきみだけよ。そうでしょ?」
彼がまっすぐに自分を見るのを確かめてから、彼女はまたくすくす笑った。
「まぁ、ねー。天之橋君がこんなに立派になって、高校生の女の子をメロメロにしてるなんて、あの頃のきみからは考えられないけどね」
「な、何を」
「まぁまぁ。過去の女性遍歴は、にはナイショにしておいてあ・げ・る
「み、水月さん!」
彼女の口から出るからかいの台詞に、天之橋はあたふたと慌ててしまう。

今も昔も、彼女にかなう彼ではなかった。

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