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 大晦日頂上決戦! 1 

「こんばんは、三優。……晴れ着とは嬉しいね、とてもよく似合うよ。」

車にもたれて夜空を見上げていた天之橋が、傍に駆け寄って来た少女を見つけて微笑んだ。
「あ…あのっ、急いで支度したからっっ……どこもおかしくないですか?」
息を切らせながら、くるりと廻って帯を気にする仕草。
「おかしくなんてないよ、とても素敵だ。……ここまで、走ってきたのかい?」
「あ、はは……『車に』じゃなくて、『駐車場に』って聞いたから、多分外にいらっしゃると思って……結局お待たせしちゃいましたね、ごめんなさい。」
「いくらも待っていないよ。それより着物を着て走るなんて事はやめなさい。帯を締めているんだから、気分が悪くなったりしたらせっかくのお楽しみが台無しだよ?」


電話をしたのは、つい三十分前。
何やら賑やかな雰囲気を通り掛かりに見つけて。
そういえば、今日は大晦日だったな……。
そう思って、なんとなく駐車場に車を入れた。

石段を上がると、新年になる瞬間を味わいたい人々がたくさんいて。
そんな人目当ての出店の数々が所狭しと並んでいる。
それを見て、そこが彼女の家からさほど遠くない事を思い出した。
何度かためらって、それでも両手にいっぱいの好きな物を抱えて喜ぶ顔が目に浮かんで。
周りの活気に後押しされるように、携帯を取り出して電話をかけた。


「寒くはないかな?向こうで甘酒を振る舞っていたから、行こうか。……ああ、今日だけだからね?」
口唇に指を当ててウインクする彼に、少女も笑ってそれに倣う。
雑談をしながら石段を登ると、登りきった所で少女が目を輝かせた。
「うわぁ、すごい。花火大会くらい、いっぱいありますねっ!」
「そうだね。毎年初詣には来るけれど、大晦日からこんなに賑やかだとは知らなかったよ……去年も来ればよかったな。」
そう言って笑いながら先を促し、さっき確認しておいた場所に向かう。

『熱いから気を付けて』と前置きして紙コップを渡しても、彼女の瞳は夜店に注がれていてまったく耳に入らないらしい。
「……どれを一番に買うか悩んでいるのかな?」
「……あ…やだなぁ、わかっちゃいました?」
恥ずかしそうに笑う少女に苦笑して、一緒になって出店を眺める。
「ふむ……さしずめ、綿菓子というところかな?」
「え!?すごい、何で分かっちゃうんですか!?」
「ハハハ、ま、色々とね。」
ビックリして目を丸くしたまま、少女が紙コップに口をつけた。
「あちっっ!!」
ぱしゃ、と地面に落ちた甘酒に、天之橋が慌てて少女の顎を掬った。
「三優!?見せてみなさい!……あぁ、大丈夫、何ともなってないから。今日は冷え込んでいるから口唇が冷たくなっていて、熱いように感じただけだよ。」

涙目の少女に、彼がそう言った時
何か殺気立った、目にも止まらぬ物が向かって来るのを視界の端で捉えて、思わず少女を後ろに庇った。

「いぃ〜っっかぁ〜くぅうぅぅーっっっ!!!」

「は、花椿か?……驚くじゃないか。」
玉砂利を蹴散らすほど勢いのついた彼に、天之橋が抗議する。
「なにが『は、花椿か?……驚くじゃないか。』なのよっっ!?驚いたのはこっちよ!!三優の声だけでも、ってコソコソトイレに隠れてまで電話をかけたのに尽が出て、『ねぇちゃん?天之橋のおっちゃんとお参りに神社に行ったよ。慌てて晴れ着なんて着て行くから携帯忘れちゃって、おっこちょこいだなあアハハハ』なんて言われて速攻来てみたらなに!?何してんのよアンタは!しかもこれ甘酒じゃない!?甘酒っていうと甘い酒よ!?酒なのに甘いのよ!?まったく驚き桃ノ木山椒の木だワ!!!」
「……おっこちょこいって……」
「……すごい、似てる〜!」
頭痛がしそうな天之橋とは逆に、一息にまくしたてた花椿の台詞の随所に盛り込まれたモノマネを、少女が手を叩いて喜ぶ。
「三優〜?ど・う・し・て、アタシを呼ばないのかしらァ〜?」
無理矢理の笑顔で花椿が少女を振り向く。
「えっ?だって花椿せんせい、お店の人たちと忘年会って……せんせいのお店の忘年会にせんせいがいなくなったら困るじゃないですか?」
きょとんとした少女の言葉に、彼が頭を抱えた。
「そんなモノはどうだっていいのよォォーっっ!『好きに呑んで喰って喋って勘定はアタシ持ちの会』なんだから!!!」
「え、そうなんですか?じゃ遠慮するコトなかったですね、なぁんだ。」
「しかもなんでアンタ晴れ着!?」
「え、あの……だって……」
「しかもウチの服じゃない?それはパンピー用なのよ!?なるべく万人に似合う仕様なのよ!?三優の晴れ着なら昨日夜なべでアタシがデザインしてカットして縫製してもう出来てウチにあるのにぃー!!」
「ホント!?じゃあ明日の初詣はそれにしますっ!わぁい嬉しいな
「そう?じゃ、午前中にウチに来なさいね。メイクも着付けもしてあげるから。約束通り一日空けてあるから朝五時から来てもかまわないわヨ
「ヤダなぁ、そんな朝早く起きたら私眠くなっちゃって、お昼寝しちゃいますよぅ?」
「じゃ、いっしょにお昼寝しましょうか?アハハハハ……って、ちっがぁーうっ!!
 そうじゃないワ、何をのほほんと談笑してるのかしらアタシったら!?問題はアンタよ、アンタなのよ!天之橋 一鶴!!」
「花椿……相当呑んでるだろう。悪い事は言わないからもう帰って休んだ方が……」
「ハア?なんですって?まったく聞こえないワぁ!?アンタ、アタシの三優に何してんのヨ!」
「何って……何をしているように見えたんだ?」
「キスしてるように見えたワ!!!」
「それは、誤解だよ。三優が飲んだ甘酒が熱くて、火傷していないかどうか……」
「誤解なんかしてないわよ!三優が他の男とキスするワケないじゃないのっっ!そう見えるくらい接近してたのが気に入らないのヨ!!それにもし火傷していたとしても、アンタが覗き込んだ所でそれが治るワケ!?アンタがあの時しなきゃならなかったのは冷やすモノを探してくる事よ!?ま、この寒さじゃそれも必要なかったでしょうけど!!」
「しかし、私だって心配して……」
「ゴチャゴチャうるさいワ!とにかく、勝負よ!一鶴!!!」
参拝客に振る舞われている樽酒を指さす花椿に、すでに頭痛がしていた天之橋と三優が同時にため息をついた。

「……花椿せんせい!もうやめてくださいよぅ、みんなで一緒に遊べばいいじゃないですか!」
「私はこれから三優達を家まで送り届けなければならない、酒など呑める訳がないだろう?」
「アラ?アラアラアラ?逃げるの?そう〜、やっぱり口ばっかりね、この髭男爵は……ねぇ、三優?コイツってばね、大学二年の時の正月にねぇ……」
「花椿っっっ!!!……コホン……わかった、一時間だけ付き合ってやる。
 ……三優、すまないが聞いた通り、これから花椿に付き合ってやらなければならなくなってしまって…これを着て、火のそばで待っていなさい。いいね?」
「よぉし、今日こそはコテンパンにしてやるワ!見ててネ三優っ!」
コートを脱いで少女に渡した天之橋が、ため息をつきながら振舞酒の方に向かうと、花椿が後ろから三優にコートを着せかけてそれに続く。

「はあ……まったく、もう!」

残された少女は、天之橋のコートを引きずらないように丁寧に畳んで、後を追った。

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