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 冬の贈り物 1 

「は、あぁーー……」

盛大な溜め息と共にガックリと肩を落としつつ、少女は昼休みも終わりに近づいた校内をとぼとぼと歩いていた。
今日は一年に一度の、世界中がハートで埋まる日。
お正月飾りと入れ替えに店頭に並びだした色とりどりのチョコ達も、今日がやっと本番。
世界中の女の子の、色んな想いを背負って手渡されるはずの日。

勿論少女もこの日の為に、何週間も前から準備して。
有名な洋菓子店に何度も足を運び、デザインを盗み、材料を1ダース出来るほど買い込み、設計図(?)まで描いて。
夕べ徹夜で作った中から一番の出来のものを、揺らさないように苦心して持ってきていた。
取りあえず刻々と近づいて来るその時よりも先に、少し形が悪かったり上掛けのチョコレートが上手く掛からなかった失敗作は気軽に食べてくれる友達に配ろうと、親友のクラスを訊ねたのだったが


「あ、三優!いーとこに来たねっ。」

笑顔で手を振る奈津実の机の上には、積み上げられたチョコの山。

「部活の後輩が全員でさっき持ってきてさ〜、いくら好きでもこんなに食べられないし一緒に食べて一緒にダイエットしてくんない?」
「そら、おかわりもあるで〜。」

拝むような姿勢の彼女の後ろで、明るい声と共にリボンの掛かった箱がドサドサと机に散乱する。

「あ、ちょっとまどか!自分の分は自分で!ソレなんかさっき一年の女の子が持ってきたヤツじゃん、そんなイヤそうに食べないでよ、あの子足震えてたんだから!女心が分かってないなぁ。」
「あのなぁ…無理やって、見てみいなこの量!毎年俺がこの日の帰りどんだけ苦労して家まで帰るか知ってるやろ?修行やで〜あれは。」

溜め息をつきながらも少し得意そうな彼の机の横には大きなボストンバックが三つ積まれていて、一番上のはチャックが閉まりきらず大小様々なプレゼントが顔を覗かせていた。

「すごいね〜、まどかくん…あ、じゃあやめとこうか、わたしも持って来ちゃったんだけど。」
「ナニィ!三優ちゃんが俺に!?」
「あ、全然上手じゃないんだけど…捨てるのも勿体ないし…」
「手作りかいな!?食う、食う!死んでも食うで俺は!焦げてても溶けてても!」
「………そんなにひどくないよ。」

ぷう、と頬を膨らませ手提げから包みを取り出すと、今まで持っていた食べかけの箱を投げるように机に置いて彼が手を差し出す。
なんとなく、置かれたそれを覗き見て。
うっ、と息が止まる。

ピンク色の柔らかなクッション材に一つ一つ丁寧に包まれているチョコレート達は、滑らかに丸くつややかでホワイトの上に掛かったビターチョコの斜の線が細く華奢な模様を描いている。
まるで本職が作ったような見事なそれの隅に一つ、どう見ても同じ線で、彼の名前が入っていて。
上掛けと線のチョコがそれだけ逆なのも、まるで手作りの証だというように誇らしく見立っていた。

「…………やっぱり、ダメ…」
「ええぇー!?そんな殺生な〜……」
「どしたの?三優??」
「…わ、たし…日直だから、ゴメン…帰るね。」

手を出したままの彼が悲痛な表情で机に倒れ込むのも気遣えず、走ってその場から逃げ出して来たのだった。


「……あんなに上手に…作れないもん。」

渡り廊下の窓に映る自分を睨みながら、少女がまた溜め息をつく。
なるべく綺麗なのを、と選んだら大きさがまちまちで、しかも見た目もさっきのとは格段に違う自分のチョコレート。
勿論、想いを込めて一生懸命作ったのだから、とみんな言うだろう多分あのひとも。
けれど、自分にとってそれは、『人より劣った物』以外何者でもない。
そんなものを一年に一度の大切な贈り物に、大切なひとに、胸を張って渡すことは出来ない。

「……やっぱり、お店で買おう…それで明日、渡そう。」

滲んだ涙を腕でごしごしとこすって目を上げた時、いつの間に降り出したのか、空から白いものがふわふわと舞っているのに気付いた。

「…わ……雪だぁ…」

もううっすら積もっている雪化粧の中庭を見渡して、ふと見覚えのある色に目が止まる。

「あ…天之橋さん!?」

雪の中、しゃがみ込んで何かしている彼を見て急いで階段に行きかけて、足が止まる。
今日はバレンタインデー。
贈り物がなくなった少女は、出来れば彼に会いたくなかった。
催促されるようなことはないだろうけども、翌日渡す言い訳が欲しかった。
日直なのは本当だし『休み時間も仕事があって、放課後も家の用事で早く帰らなければならなかった』と言えば、不思議がられずに明日渡せる。

何か失くしたんだろうか…?
雪が降っているのにコートも着てない…。

向こう向きにしゃがみ込んで手を動かしている彼を、何度もそっと見て、迷うように足踏みし、やがて大急ぎで階段を蹴った。

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