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 ひみつのきもち 4 

「……すごいね、まどかくんは」

しばらく沈黙が続いた後、少女はポツリとそう言った。
「そんなこと、告白するのって、すごく勇気がいると思う……。私にはできないと思う。えらいね」
おたがい遊び目的でつきあっていた相手に、本気になったことを打ちあけることは、どれほどの勇気がいることだろう。
つきあっている相手に、自分を繕っていたことを告げることも。
しかし、まどかが欲しいのはそんな言葉ではなかった。賞賛や激励ではなく、ただ一言、自分を赦すという言葉が欲しかった。

やっぱ、ダメ、か……。

諭すような口調が、暗に拒絶を示していることを感じて、まどかは小さく笑顔を作った。
好きになってくれるまで待つなんて、食い下がることもできない。今まで、彼女を騙していたようなものだから。

「そ…、か。……せや、お茶でも入れるわ、なんやしめっぽくなってしもたし」
思わず涙が出そうになり、最後の矜持でそれを隠しながら、まどかは台所へ立とうとした。

と。
離そうとした手がぐいっと引かれ、まどかはバランスを崩してよろめいた。
「ぅわっっ!??」
バタンと床の上に倒れ、したたかに打った後頭部をさすろうとした彼の、至近距離に少女の顔があった。

私には、できなかったんだよ。まどかくん」
「……?何、が?」
妙な行動にポカンと呆けて問い返すまどかに、少女はそれ以上口を開こうとはしなかった。

本当に好きだと告げること。本当の自分は、彼女のことしか頭にない、独占欲の強い人間であること。
それを少女はすごいと言い、自分にはできないと言った。

ん? 自分には“できなかった”???

繰り返された言葉に思い当たり、わずかに眉をひそめ、ついで彼は驚いたように目を見開いた。
「まさか、……水結!?」
「ニブイ!ニブイよ、まどかくん!言ったじゃない、私はまどかくんが好きだって!
 なのに、私がまどかくんの周りの女のコに嫉妬しないと思うの?まどかくんのこと、独占したくないと思うの?
 おんなじなんだよ、私だって!」

街に出たとき、偶然まどかと奈津実が二人で歩いているのを見た。二人は仲良さそうにじゃれ合っていて、それを見ていると胸が苦しくなった。
いつもそうだった。決して自分にはしてくれない、まるで夫婦のような打ち解けた態度。
たばこだって、自分の前では一度だって吸ったことはない。体に染みついたにおいで、喫煙者であることは知っていたけれど、以前部屋に来たときもたばこどころか灰皿さえ見かけなかった。
それから、他の女の子と平等と言われたときのショック。無意識に自分は特別だと思い込んでいたことに、恥ずかしさを覚えた。
彼は決して自分だけのものにはならない、遊びの相手なのだと、必死で自分に言い聞かせていた。
なのにまた、クリスマスを自分と過ごしてくれるのが当然だと思ってしまっていた、自己嫌悪。

「うそ…やろ……」

泣いている彼女の顔が、まどかには輝いて見えた。
「うそじゃないよ。ナツミが私に言ったの、“私はまどかが好き。誰にも渡さない”って。
 羨ましかったよ。公然と言い切れるナツミが。
 好かれていようといるまいと、勇気を持ってそう言いきれるナツミが。
 私なんて……私の方こそ、まどかくんに好かれる資格ないんだよ。
 嫌われるのが怖くて、失うのが怖くて、何にもしないでずっと嘘をついてたんだから」
ぱたぱたと、涙がまどかの頬におちてくる。その雫は熱を帯びていて、彼の心を硬直から呼び覚ました。

水結、ホンマか!?ホンマにオレのこと、まだ好きか!?
 ……やったーーー!」
覆い被さるように自分を見つめる少女にがば、と抱きついて、まどかは嬉しそうに叫んだ。
「なんやなんや、ビックリさすなやー!てっきりフラレたんやと思たやんか!
 ホンマにホンマにええねんな?もう待ったはナシやでー??」
「………………」
状況をまったく意に介してない態度に、少女はどういう表情をしていいか分からない顔をした。
「あ、……スマン。オレ、舞い上がってしもて……」
少しだけ離し、彼は屈託ない笑顔を見せた。
「資格なんて関係ない。資格がほしいなら、オレにもろたらええ。
 今すぐ、ずっと、いつまででもやるさかい。なんでもええんや、おまえがオレのこと好きなんやったら。
 ぜんぶチャラでええんや!オレのこと、世界でいちばん愛しとんやろ!??」
「な……」
カアッと顔を赤らめる、その反応がまさに図星を示していて、まどかは思いっきり嬉しそうな顔をした。


「あ〜よかったぁ〜!!よっしゃ、オレはもう遊び人廃業や!!これからは水結以外の人間と遊びにいかへんし、話しもせぇへん!目も合わせん!」
「ソレは無理!」
「……一瞬も考えんで突っ込むんかい!」
まどかは大げさにずっこけた。
「……でも、じゃあもう……私以外の女のコは、部屋にあげないでね。……約束」
ちゅ、と頬に口づけられて、まどかはうっと言葉に詰まった。
「も、も、もちろんや!もちろんやけど………水結?」
「ん?」
少女の耳を引き寄せ、ぽそぽそと囁く。
「そしたら代わりに、今ココで……っちゅーのは……ダメ?」
……ガクリ。
頭を垂れた少女は、ため息をついて、言った。

イイよ、なんでもしてあげる。ただし、私をキミの一番にしてくれるならね!」

FIN.

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