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  MN'sRM > GS別館 > GS1創作 > 天之橋・約束シリーズ1 >

 Love YOU only 2 

「君は、その……そういうことが気になるのかね?」

「え?」
意味を計りかねて彼を見ると、彼は暗雲を背負っているような表情で少女を見ている。
「その……世代の違い、とか……」
言いにくそうに呟かれる言葉に、少女は一瞬目を丸くして。
次いで、何かに気づいたような表情をすると、くすりと笑って目を細めた。
「そうですね。気にならない、といえば嘘になりますけど」
「……、そう…か」
天之橋は、自分の視線が自然と下向いてしまうのを感じた。

正直、そんな言葉が返ってくるとは思っていなかったから。
本心はどうであれ、少女が自分を思いやって『気にならない』と答えることを、無意識に期待していたから。
現実を疎ましく思うなど、無駄なことだと分かっているのに。
先程まであれほど大事だったその機械さえ、忌々しく思えてくる。

少女は彼に構わず、言葉を続けた。
「……でも。嬉しくもありますよ?」
あぁ、と機械的に相槌を打ってはいるが、その言葉はほとんど彼の耳に入っていないようだ。
失意が頭を覆っているせいで、彼女の口から逆接の言葉がつむがれたことにも気づかない。
少女ははにかみながら、小さな声で呟いた。

「だって、そんな方が、私のこと……その……デートに誘ってくれるんですから
ふと、聞こえた言葉が。
部屋の空気を一掃したような気がした。

「……………えっ?」
三瞬ほどの時間をおいて、天之橋が視線を上げると、そこには頬を赤くしてあわてる少女の姿があった。
「な、なんでもないです!」
口に出した瞬間、思った以上の恥ずかしさを認識した少女は、焦ってぶんぶんと首を振った。
「え、えっと!もし私が天之橋さんの同年代だったら、レコードのことを聞く楽しみもなくなっちゃいますし!
 天之橋さんが私と同じ年だったら、友達とおんなじ話しかできないですよね!
 だから私は、これでいいんだと思いますっ!」
取り繕いが見え見えの態度で叫びながら、ばたばたとテーブルに寄ってポットを取り上げる。
真っ赤な顔をした少女の慌てぶりに、つられて天之橋もすこし照れた。


自分が感じた、年齢の壁。世代の溝。
彼女はそれを憂うのではなく、崩し埋める楽しみがあると言う。
同世代の友人よりも、話の幅が広がるのが嬉しいと言う。

敵わないな……君には。
天之橋は脱帽した。
彼女の言う通り、少なくとも自分は、年齢で彼女を好きになった訳ではない。
ふたりの違いも楽しみに変えようという、ただひとりの少女に、恋をしているのだから。

だから。
彼女を逢瀬に誘い、同じ時間を過ごすのだ。


「……そうだね」
彼女の小さな呟きが、聞こえなかったふりをして。
レコードの話と、次の休日の誘いと、どちらを先に話そうかと迷いながら。
「私も嬉しいよ。君がそうやって、いつも素直な気持ちで私の傍にいてくれて……
 私が気づいていない、新しいことを教えてくれる。
 君といると、自分の世界が何倍にも広がる気がするよ」
「私もです!……じゃあ、これからもずっと一緒にいて下さいね!」
照れ隠しの勢いで言った、そんな言葉が。
彼にとっては、プロポーズと同じくらいただならぬ発言であることに、彼女は気づいていない。
彼は苦笑しながら少女に近づき、首を振った所為で乱れた彼女の髪を、指で梳いた。

「君さえ良ければ、是非。
 だけど。他人の前では、間違ってもそんな事を言わないように。いいね?」
我ながら滑稽だと思うくらい、真面目に告げた言葉に。

「?はい!」
よく意味も分からないまま少女は元気に答え、彼をもう一度苦笑させた。

FIN.

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