いきなり身体が横抱きに持ち上げられて三歩先のベッドに投げ出される。
「………きゃ!!先輩っっ…あ、明るいのはイヤですっ…」
はだけた裾を掻き合わせながら慌てて言うと、ベッドの上の壁にあるスイッチが即座にバチンと音を立てる。
室内灯が消えた事で、窓から差し込む月の光が部屋中に濃い陰影を映し出した。
「カーテンが、開いてっ……」
「もう待てねぇ」
「やっっ…んん!……ふ、あ、ぁっっ…!!」
浴衣の襟元を強引に左右に開いて、肩口に噛みつくように口づける彼。
普段の真咲からは想像できない荒っぽい仕草に、咄嗟に押しのけようとした彼女の手は簡単にシーツに押さえつけられた。
舌が首筋から耳まで這い上ってくると、そのゾクゾクする悪寒に似た感覚に、彼女が身を固く縮める。
「先輩……っっ…あ!…や、あぁっっ……」
胸元まで下りてきた舌が下着で止まり、片手が解放されると同時にフロントホックに手が掛かる。
力任せに下着が外されると、外気に触れた心細さで彼女の身体がビクリと震えた。
それまで乱暴に動いていた手が一瞬止まって、真咲が上体を起こす。
「………………」
「………せんぱ……い……?」
「…………真っ白だ。…すっげぇキレイ…」
月の光に青白く浮かび上がった胸元に、彼が息を飲んで呟いた。
「やぁっ……見ないでくださっ…あぁっ!………」
「今日は見る。オレのだもん」
ふと押さえつけられていた手首が軽くなり、大きな手のひらに握り込まれる。
起こした体が彼女の膝を割って密着し、羞恥に頬を伝う涙を舐め上げて。
もう一度舌が、先ほど下着に邪魔された辺りからやわやわと胸の形をなぞるように進んでいった。
「ふ………っ…あぁ…っっ!や、んっ……」
胸の先端を含まれてビクビクと跳ねる身体を持て余し、彼女が自由になる片手で彼の頭を押さえた。
それでも音を立てて吸い付き甘噛みされると、大きな声を上げそうになって唇を噛む。
「………ふっ…んんっっ……」
「それもオレの。噛むな」
声の変化に気づいた真咲が指を唇に割り込ませる。
人差し指と中指が噛み合わせに入れられ、他の指が逃げられないように顎を固定して。
喋ろうとした彼女の舌が彼の指の間でぬるりとうごめく。
「…んん、ふぁっ…れ…ふ、ぁ……」
「……っっっ!……はっ…おま、え……わざとか?」
「ふぁ……に…?」
「……いい。つーかもう無理」
口から指を抜くと糸を引いた唾液が胸まで垂れる。
その道筋を下から唇まで舐め上げながら、濡れた指はそのままショーツの中に突っ込まれた。
「いっ…や、や!……あぁ!…ふ、あぁっっ…」
止めようとする彼女の手と腰を一緒に掴んで引き寄せると、片手でショーツを引きずり下ろす。
邪魔な布切れを片足だけ抜き去って、前置きもなく熱く溶けたそこに指を入れた。
「やあぁっっ!……くっ…あ…ぅ…」
逃れようと仰け反って浮いた身体を軽々と抱きかかえて半回転させて。
うつ伏せた彼女の浴衣の裾を捲り、さらに奥に指を進めて掻き回す。
「いやっ…や!こんな…っ…ふぁぁんっ…やぁっ、あ!」
シーツを握りしめて首を振る彼女の上に覆い被さって、彼が耳に顔を寄せた。
「……の体は全部、オレのだからな」
「……ふ、あっ…………」
荒い息とともに吐かれる嫉妬の言葉には、いつもの余裕など微塵も感じられない。
大切な玩具を誰にも触らせないと怒る子供のように一途で懸命な自己主張。
こんなに感情を露わにした彼を、初めて見た。
指が引き抜かれて、どこにも触れられない短い時間に回らない頭でそんな事を考えて。
シーツに突っ伏した腰を、彼の手が再び掴んで引き起こすまで体勢を立て直すことすら忘れていた。
ぐっと当てがわれたそれが、一気に奥まで押し入る。
「ひっ…あーーーっっっ……!!」
「………く……っっ…」
いつものように浅くゆっくり慣らされる事もなく。
いきなり最奥まで進入してきたそれに対する内部の抵抗に、彼の口からも押し殺した声が漏れる。
息苦しいほどの圧迫感を逃す彼女の声は長く響き、引っぱられてくしゃくしゃになったシーツに点々と涙の跡が出来た。
それでも間を置かずに強く腰を打ち付けると、腕が支え切れなくなった彼女の身体がシーツに崩れ落ちた。
「ひ、ィっっ………あ、あ!……せんぱ、ふあぁっ!」
容赦なく腕を掴んで起こすと、更に深くなった結合部が卑猥な水音を立てる。
「………………っ…す、げ…熱いっ……」
「あ、ぅあっっ……は、ぁ、ああ!」
肩口をゆるく縁取る浴衣の襟を引き下ろし、それでも邪魔する肩紐を袂から手を入れて抜き取って。
月光に照らされた背中に吸い付いて痕を付ける。
自分の物であるという証の、いくつもの痣。
痛みを感じるほど強く吸うと、またも奥からあふれた愛液で結合部がぐちゅり、と鳴いた。
ぬめる内壁はきつく収縮し、異物を押し出そうとしていた今までとは逆に、腰を引くときに強い負荷が掛かった。
「あっ!あ、だ…めっっ!ひ、ああっ!……せんぱ、…っっも、ダメっっ…!」
今まで聞くことのなかった彼女の限界を告げる声と、熱く強く締め上げられる感覚。
自身の限界も危うい所まで来て、彼が完全に腰を引いて彼女を離した。
「やぁ…っっ………せん、ぱ…ぃっ…」
シーツに解放されて振り返る彼女の物欲しげな瞳。
乱れた髪とすでに引っかかっているだけの浴衣が黒々と影になりいっそう肌を白く見せる。
それが正面から見えるように身体を裏返し、もったいつける余裕もなく腰を掴んで突き上げた。
「はあ、ぁっ!…せっ…あぁ、ふ…まさき……せ、ん、ぱいっっ……あぁっっ!」
離れているのが不安なのか、彼女の手が空を彷徨う。
胸を合わせると、伸ばされた両手が居場所を見つけたように首に回された。
耳元で紡がれる喘ぎ声の中に、うわごとのように繰り返される自分の名前。
これまでの恥じ入りながら漏れる幼い喘ぎとは格段に違う、情欲にまみれた嬌声。
目を移せば涙に濡れる瞳が薄く開かれ、快楽を追い掛けている。
その証拠であるかのように、突き上げている下半身に感じるのは同じように揺らめく腰。
世界で唯一、自分だけが見ることが出来るその姿。
「まさっ……はぁっ……せんぱ、あぁぁうっっ!も、だめっ…あはぅっ…だめぇ!おねがっっ…あ、あ」
「………う……くっ……っ…オレ、イキそ……」
限界を告げると白い喉を見せて仰け反り、握りしめるように締めつけられる。
ガクガクと震える膝が彼の体に絡まり、首に巻き付いた指がきつく食い込んだ。
「……ぅわヤベっ………は、イッ…………」
「…あ、あ!ひっあ、あ、ああぁっっ!せん………いっ…ああぁーーーっっ……!!!」
モノクロに明滅していた視界が真っ白に染まり、そこに落ちていく気がして。
遠くぼやける意識の最後まで彼を探した。
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