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【 反 省 文 】


 氷室先生へ。 

  
      先生に内緒で、マスターさんのお店に出入りしてて、ごめんなさい。

      私、先生のこと、今でも大好きです。
      でも、先生は私のこと、生徒としてしか見ていなくて。
      教師と生徒は、恋に落ちるべきじゃないって、言っていましたね。

      最初は、なんで生徒の私を好きになることが、ダメなんだろうって悩みました。
      先生が私を好きじゃないことは仕方ないけれど、それでも、
      教師と生徒だから好きじゃないと言われるのは我慢できませんでした。

      だって、私は初めから、先生の生徒として先生に出会ったから。
      そして、教師として先生のことを尊敬し、信頼して、そして……すきになったから。

      でも、先生は、いつでも私が思うような立派な先生で。
      私のために、信念を崩してくれなかったのはちょっと切ないけれど。
      そんな先生を、嫌いになることは、きっと一生できないと思います。

      先生の気持ちも考えず、馬鹿な告白をしてしまった私だけれど、
      これも氷室学級のエースの成長に必要なことだったと思って、許してくださいね。


      それと。
      マスターさんのお店に行ったのは、先生への気持ちを聞いてほしかったからです。
      もし藤井さんや葉月くんに相談して、万が一先生によくないことになったらと思い、      
      学校の人には相談できなかったから。

      マスターさんは、勝手に訪ねていった私の話をずっと黙って聞いてくれて、
      あきらめないで前向きになろうって言ってくれました。

      私の知らない先生をすごく知っていて。
      先生の性格なんかも、よく分かってる。
      そのひとが、先生に嫌われてるわけじゃない、あきれられているわけでもない。
      少なくとも真剣に気持ちは受け止めてくれているはずだって。
      そう、励ましてくれるのが、すごく嬉しかった。
      先生に嫌われたと思って、夜も眠れなかった私を、安心させてくれた。
      マスターさんと、先生の話をするのが、すごく楽しくて。
      気が付いたら、毎日のように足が向いてしまっていました。

      でも、それを先生が知ったら、優しい先生のことだから。
      生徒を心配して、こんなお店に高校生をって、マスターさんを怒ると思って。
      お願いして、黙っていてもらったんです。

      マスターさんと、けんかしないでくださいね。
      たぶん、マスターさんは、親友の生徒である私を気遣ってくれて。
      私が先生のことで泣いていることを、気に病んでくれたんだと思います。
      (もちろん、それは私が勝手に泣いているだけなんですけれど)

      すごく、優しいひとだと思います。
      私、マスターさんといると、ありのままの自分でいられる気がします。

      だから。もう少しだけ、私をマスターさんの傍にいさせてください。
      先生に心配をかけるようなことは、絶対にしません。
      クリスマスの時みたいに、非常識な時間にお店に行くようなこともしません。


      日曜日に、お店で会ったとき。
      私がマスターさんを利用して、先生に迷惑を掛けようとしてる、と。
      思われるんじゃないか……って、思いました。

      だから、思わず親しいふりをして。
      お店のお手伝いもしてる、ここにいるのを許されてる、ふりをしてしまいました。
      ごめんなさい。
      本当はいつも、ただ、マスターさんとお話をするためだけにお店に通ってて。
      たぶん、いろいろ迷惑もかけてしまっていると思います。

      でも。
      私、マスターさんと一緒にいるのが楽しいです。
      迷惑かもしれないと思っても、マスターさんと一緒にいられなくなるのが、怖いです。


      たぶん、私。
      もうすぐ、マスターさんのこと。
      すきになってしまうと思います。


      『酒以外の客が増えるのは面倒だ』とかいいながら、お店を喫茶店にしてくれたり。
      私の好きなカクテル(ノンアルコールですよ!)の材料がないって、
      慌てて業者さんの所に行って、半日も帰ってこなかったり。

      懲りない私のことだから。
      もしかしてもしかしたら、少しでも私に好意を持ってくれてるのかな?……なんて。
      自惚れてしまったりしています。

      先生の時のように、また、勝手に思い上がってるだけかもしれないけど。
      いつか、マスターさんに告白したら。
      また、ごめんねって、フラれちゃうかもしれないけど。

      もしそうなっても、私は平気です。
      しばらくは落ち込んでしまうだろうけど。
      きっとまた、前向きになることができます。

      その力を、先生とマスターさんがくれたから。

      私は、私のままで。
      私の思うように、人生を生きていくことができると思います。


      氷室先生、私の先生でいてくれて、ありがとうございました。
      先生が居なかったら、私、エースだなんて言われるような人間になれませんでした。
      先生に認められたいって思って、頑張ったことが。
      今では、私自身を素晴らしい人間にしてくれたような気がします。

      先生が、いてくれたから。
      私、自分を好きになれたんです。

      卒業しても、氷室学級のエースとしてでいいですから、
      私のこと、忘れないでくださいね。

      そして、いつか。
      先生と、マスターさんと、私で。
      一緒に、過ごせる日が来たらいいなって……
      そう、思います。


      先生に感謝の気持ちを込めて

2005年2月22日      
      

  

 
 
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