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「理事長ー!!」

がしゃーーーーん、と割れそうな音を響かせて、温室のガラス戸が一気に開けられた。
同時に響き渡る、学園長に対する声音とは思えない叫び声。

「……?」

少し呆気にとられながら、手入れをしていた手を止めて振り向く。
入ってきたのは、息を弾ませて血相を変えた少女。
天之橋は微笑んで、つかつかと歩み寄る彼女を迎えた。

「どういうことよ!あれだけ言っといたじゃない!」
「……少し、落ち着きなさい。一体何の話だね?」
「来週の予定よ!アンタ、アタシの話を聞いてたの!?」

は長身の彼を見上げ、食って掛かるという表現がふさわしいくらい声を荒げている。
それを見て微笑ましいという感想が浮かぶ自分に、苦笑。

「来週は、ウチの部はバスケ部の校外試合の応援だって届け出したじゃない!ミーティングで決まったのよ!
 なのに、なんでバレー部の応援が入ってンの!?」

ああ、と思い当たって、天之橋は顎を撫でた。

「そう言えばそんな話をしていたな……だが、試合予定がかち合ってしまってね。
 全国大会ベスト8のバレー部と、県大会で決勝に進むのがやっとのバスケ部では、前者を優先させるそうだよ」
「成績がいいからって優遇するわけ!?そんなの間違ってない!?」
「仕方ないだろう、職員会議での決定なのだから。バスケ部の顧問にも了解は取ったはずだが」
「そういう問題じゃないでショ!?」

一刀両断して睨み付けるに、天之橋は小さく笑うと、ふっと視線を外した。

「……ああ、そういえば……もうすぐKTYO交響楽団のコンサートがあるのだが」
「話をそらすな!」
「君が行きたいなら、チケットを用意するけれど。どうかね?」
「クラシックなんか興味ないし、そうじゃなくてもアンタとなんか行く気ない!
 いいから話を聞けーーー!!」

スーツの合わせ目をひっ掴んで、服が乱れるほど揺さぶる。
それを、しれっとした表情でもう一度見て。

「ちゃんと聞いているよ。ほら、そんなにくっつくと他の生徒に見られてしまうよ?」
「……っ!」

彼の視線の先、温室に隣接している渡り廊下を歩いていく女子生徒のグループ。
それを確認し、一瞬手の力を抜いた彼女にクスリと笑って、天之橋は油断した体をきゅっと抱きすくめた。

「う、ぅわ!」
「人目を気にするということは、少しは自覚してくれているのかな」
「な、な、なんの話よ!そんなことより、アタシの話を…………離、しっ……!」
「だから、聞いているよ。君の意見には私も賛同するが、職員会議での決定はそうそう覆せないからね」
「だ、だからって…アンタは説得ってものを、しない、わ、け!?
 そうでなくても、チア部は不公平だって和馬にも言われ……!」

しどろもどろに反論していたは、口走った言葉の続きを慌てて飲み込んだ。
だが、時すでに遅く。
天之橋は瞳をすっと細めると、を抱いているのと反対の手で眼鏡を外し、カチリと音を立ててそれを胸ポケットにしまい込んだ。

「ほう。和馬……とは、バスケ部の鈴鹿君のことかな?
 なるほど。それなら、ますます許可する訳にはいかないね」
「ど、どうしてよ。……だってさっきは……」

声が小さくなるのを自覚しながら、それでもは抗弁する。
そんな彼女の耳に、唇を近づけて。

「もちろん、愛しい君が他の男を気にするのが気に入らないからだよ。
 ここで許可しなければ、君は鈴鹿君に嫌われるだろう?私には願ってもないことだが」

そ、そんな公私混同が許されるってゆーの!?

涼しい顔でぬけぬけと囁かれる台詞。は心の中で抗議したが、言葉にならない。
あからさまな言葉に知らず赤らむ頬に指を滑らせると、天之橋は俯く彼女の顎を掬い、頬に口づけを落とした。

「君は聡い子だから、聞き分けてくれるね?」
「そ…そんなの、納得できる訳が……」

言いかけて。
はなにかに気づいたように目を見開き、悪戯っぽい光を湛える彼の瞳を見返した。

どうしても看過できない、絶対に撤回させてやると、勢い込んで部を出てきたこと。
チア部の副部長として、部の決定事項に対する学園側の干渉に、反駁する責任があること。

それらを考えて。一気に肩を落とし、暗雲たるため息をつく。

「…………和馬は別に……ただの友達で」
「で?」
「部の活動をけなされたからこだわってるだけで……アイツの為、じゃない」
「それで?」

公私混同、と彼を非難した先刻を思い、もう一度ため息。

「……分かったわよ!そのナントカ楽団、行きたいからチケット取って!絶ッ対、最前列ね!!」

当てつけのように叫んだ彼女の頭を、子供にするように撫でて。

「よしよし、いい子だ。もちろんお供させて頂くよ。楽しいデートになりそうだね」

天之橋は、むくれるに極上の笑顔で笑ってみせた。

FIN.

あとがき