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  MN'sRM > GS別館 > GS1創作 > 天之橋・約束シリーズ1 >

 大人の約束 4 

「……天之橋一鶴と申します。……ええ、そうです。学園の。」
ライティングデスクの方から聞こえる声で、少女はまどろみから目を覚ました。
「……昨日は私の我が儘でお嬢さんを外泊させてしまい、申し訳ありませんでした。本日夕刻までには必ずご自宅へお送りしますので。……はい。」
寝ぼけまなこで身を起こすと、男が気づき電話しながらウインクを投げてくる。
「……はい。御挨拶はその時にでも……はい?……い、いえ……あの……も、もちろんです……」
急にあたふたとする彼をぼーっと見ながら、少女は枕元に置かれたアイスペールの中のミネラルウオーターを取った。
「……どうかしたんですか?」
電話を切り、むつかしい顔で歩み寄ってくる彼に声を掛ける。
「いや……その、君のご両親はずいぶんと、その……革新的な方たちなのだね」
「え!?」
一瞬で、目が覚めた。
「天之橋さん、うちに電話してたんですか!?」
「ああ、私からもきちんとお詫びをしておかなければならないと思ってね。……しかし……」
「なにか、失礼なことでも言いましたか?
 すみません、うちの親ってそういうこと全然気にしないんです。ごめんなさい」
「いやいや、謝られるようなことは何もないよ。そうだね、むしろ私が謝らなければならないね」
「……???」

自分の立場を思いやって、親に自分とつきあっていることを内緒にしているといった少女。
男として、それに甘えているわけにはいかないと思い、なじられるのを覚悟で電話を掛けた。
だが少女の母親は彼の名乗りにも動じず、『あらあら、これはご丁寧に』とにこやかに答えた。
そして。
『天之橋さん、私たちはあの子の判断を信じているんです。だから、あの子の選んだ人なら心配はしません。
 でもね、あの子はまだ若いから、無茶も平気でやってしまうでしょう。あなたさえよければ、あの子をうまく制御してやってほしいんです。身体にだけは気をつけるようにってね』
男はそれを聞いて赤面した。

結局、夜が明けるまで、彼は三度も少女を求めてしまっていたから。
少女を手に入れた喜びと興奮で、理性の効かない彼は、少女に形ばかりの許しを請うのがやっとだった。
だが彼女は、けだるい表情をしながらも、そのたびに恥ずかしそうに頷いてくれた。

その所業を見透かされたようで、男にしてみれば汗顔の至りだった。
しかし、年甲斐もなくと自分を責める気持ちはない。むしろ、自分の中にこんな少年のような気持ちがあったこと、そしてそれを引き出してくれたのが彼女だったということに、ささやかな喜びを覚えた。

「……ともかく。今日、君を送り届けたら、ご両親に御挨拶をしておくからね。」
まだ不思議そうな少女をごまかすように、男はコホン、と咳をした。
「そんな。お忙しいのに、わざわざ……」
うちに来たら両親はおもしろがって帰してくれないですよ、と呟く少女に笑って、
「いいさ、結婚の許しをもらう時の予行演習だと思えば、なんてことはない」
少女の顎を上向かせ、その頬にキスをした。

「君をもらうときは、大変そうだからね」

FIN.

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