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りそうとげんじつ 3
さらさらと、流れるような髪を櫛で梳かしながら、留められたピンを外していく。 鏡の中の少女はくすぐったそうな様子で手を膝に置き、じっとされるがままになっている。 「相変わらず綺麗な髪だね。少し、伸びたかな?」 天之橋がそういうと、少女は照れ笑いをしながらこくんと頷いた。 「時々揃えてるから、なかなか伸びてくれないんですけど。やっとセミロングって言えるようになりました」 「おや、早く伸びて欲しいのかい?」 そう聞くと、少女は当然といわんばかりに振り向いた。 「そりゃそうですよ、長い髪は女の子の憧れです!あ……天之橋さんは、……短い方がいいんですか?」 力説してからふと、不安げな表情を見せる。 天之橋は笑って、その頬に口づけた。 「そうだね……君は、自分の魅力をとてもよく知っている女の子だからね。君が長い方がいいと思うなら、私もそう思うよ」 「むー……」 そんなことを聞いているのではなくて、と拗ねかける彼女に。 顎を掬い、口づけを唇に移しながら。 「髪が短くても長くても、化粧をしていてもしていなくても……私には関係ないのだよ。 私は、君という存在を愛しているのだからね」 瞳を閉じた少女の頬が、薄く朱に染まった。 「………でも。立夏ってほんとにひどいですよね!」 唇を離した途端、腕の中で呟かれた名前に。 天之橋の眉が、ピクリと反応した。 照れ隠しなのは分かっていても、キスの直後に他の男の名前しかも、よりによって彼の名前を口にすることが、神経を逆撫でる。 「いっつも私をからかって……いくら年が違わないからって、もう少し敬ってくれても」 「水結」 愚痴を零しかけた少女は、耳元で囁かれた声音にびくりとして彼を見た。 「……そういえば……先ほどのあれは、なんだね?」 瞳に、困惑の色が浮かぶ。 掠めるように、低くなった声が彼女の耳を蹂躙して。 少女の身体が、スイッチが入ったかように、竦んだ。 「立夏と。キスをしていたように見えたが」 「ち、ちが……!」 否定しかけて、鋭い目に射すくめられ、言葉が止まる。 「私の目の前で……君がそんなことをするとは、ね」 口調にだけ込められた嘲りの色に、少女は唇を噛み、瞳を逸らした。 自分にそんなつもりはない。多分、彼にも分かっている。 それはきっと、自分を陵辱するためのきっかけの言葉。 その証拠に、天之橋は鏡台の椅子に腰掛けている少女を横抱きに攫って。 そのまま乱暴にベッドに投げ出しながら、囁いた。 「悪い子には、お仕置きをしないと」 瞬間、自分に起こった変化に気づいて。 少女は、びくりと身を震わせた。 身体の奥から、あついものが溢れてくる感触。 「服を脱ぎなさい」 「……え」 自らの変化に驚いていた少女は、反応が遅れた。 一瞬後、言葉の意味を理解して顔を赤らめる。 「自分で」 強制する言葉に、イヤイヤと首を振った。 脱がされて、自発的にではなくされるのならばまだ耐えられるけれど。 目の前で見られながら、こんな明るい休日の午前中から、そのために服を脱ぐなんて。 まるで自分からそれを望んでいるようで、耐えられない。 「拒むことは、教えていないはずだが……」 じっと目を逸らしている彼女に、わざとらしくため息をつく。 「いつからそんなに聞き分けが無くなったのかな」 「っ!」 するっ、と。 片膝がすくい上げられる感覚。 短いスカートが裏返るかすかな音が、耳にこだまする。 彼に触れられている膝裏が、あつくて。 足が、震えてしまう。 「水結」 「……っ……」 低い低い声で、呼ばれて。 少女はついに、シーツを握りしめていた手を離した。 ゆっくりと、シャツのボタンを一つずつ、はずす。 それを見ながら。 眼下に露わになった場所に、舌を這わせる。 「ぁ…っや、あ…!」 下着の上から辿られる感触に、身体が震えた。 「やっ……やめっ」 思わず彼の頭を押すと、上目遣いに送られる眼光。 ぽろりと涙をこぼして。無言の圧力に耐えきれずに手を離し、再びボタンに手を掛ける。 「……ふっ……ぅ、んっ……」 声を殺しながら、服を脱いでいく。 その間ずっと、下肢からは布を隔てた刺激。 もどかしいような緩い感覚が余計に心情を煽って、それだけで昂ってしまう体。 シャツを脱ぎ、キャミソールを捲ってくぐり、ブラを外して。 スカートのファスナーを降ろしたところで、それ以上どうしようもなくなって、腰に当てられた手に触れる。 それが合図であるかのように、彼の唇が少しだけ離れて。 沈黙。 「……うぅっ……」 彼の要求が、分からなければいっそいいのだけれど。 いや。分かっていなくても、許してもらえるとは思えない。 少女はゆるゆると膝を立てて腰を浮かし、彼の目の前数センチの所で、スカートと下着を脱ぎ去った。 「……ひぁっ!」 途端に、クリアに伝えられる快感。 一瞬で頭が真っ白になる。 自分が自分でないような感覚に溺れて。 でも、自分がどんなにおかしくなっても、彼から嫌悪の感情が返ってくることはない。 それが分かっているから、溺れていられるのかもしれない。 「あ…っも、……だ…め……っ」 後ろまで濡らしながら震える彼女に、限界はすぐに訪れた。 シーツをたぐり込んで、意識を飛ばしかけた瞬間。 枕元の、インターホンが鳴った。 |