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    はじまり    

 

咲弥の朝は、光との格闘から始まる。

「……んー……」

意識を覚醒させる前から、瞼の裏にちらちらと反射する光。
それはさして強いものではないけれど、夢路から帰ってきたばかりの目は容易に眩む。
しばらくしてようやく瞳を開けると、見えてくるのは豪奢な天蓋付きベッドに壮麗な家具、石造りの壁に美しいタペストリー。
扉や窓は木でできていて、そこから燦々と朝日が差し込んでいる。
もう、見慣れてしまった風景。

「……故郷のお父様お母様、お元気ですか。ワタクシは本日も異世界で元気に起床いたしました。マル」

寝ぼけながら呟いて、咲弥はもう一度枕に顔を埋めた。
目が覚める瞬間だけは、もしかして殺風景な1DKのアパートが映らないかという期待が頭をよぎるが、それは今や一瞬だけのものとなっていた。
気がついたら元の世界でした、という僥倖はどうも望めないらしいと、日を経るにつれ分かってきたのだ。もしも何かの意思で自分がここにいるなら、その何かは咲弥を労もなく帰すつもりはないようだった。

それに、期待をするしないにかかわらず、起きて瞳を開ける前から『ここは家ではない』とわかる。
あっちではこんな風に、日の光が輝いて見えたりはしなかったから。
咲弥はこの世界に来てから、太陽の光が本当に白いのだと初めて知った。確かにゴンドールには影が忍び寄ってきているようで、天気はあまり安定しているとは言えない。時として曇りや嵐の日もある。
けれどそれでも、隣のビルにも大気中の粉塵にも遮られずに届く陽光は汚れなく、たとえ薄暗い日でも『光は闇に対抗するべくあるものなのだ』と思わせる力があった。

そんな埒もないことを考えながら寝床でだらだらしていると、不意にドアをノックする音が聞こえた。

「うお!」

考え事をしていたせいで身構えができていず、思わず声が漏れる。
入室を許可しなければいつまでも外で待ち続けるだろう訪問者を思って、咲弥は朝からため息をつきそうになった。
いったいどうして、彼女には自分の起きる時間がわかるのだろうか?毎日同じというわけでもないのに。

「……どうぞ」
「失礼します。おはようございます、サクヤ様」

いつも通りの声がして、いつも通りの姿が現れる。
朝食のトレイを持って入ってきたイルゼは、それをベッドテーブルに置くと、まだ半分寝そべったままの咲弥の前に手早く据え付けた。

わー。いつもながら一流ホテルのスイート並みのサービスだね!お大尽になった気分☆

粛々と準備がなされるそこは軽口を叩ける雰囲気ではなく、今日も心の中で呟く。
すると、それを感じ取ったように、支度の終わったイルゼが深々と頭を下げた。

「サクヤ様」
「な、なに?」
「先日、ボロミア様からお話を伺いました」
「……え?」
「サクヤ様に息苦しい思いをさせましたこと、並びに私の責任を果たせなかったこと、お詫びのしようもございません。
 どのような咎めでもお受けします。どうぞ御心のままにご処断くださいませ」

おいこら大将ッ!一体なんて言ったんだよ、これでもかってくらい伝わってねえじゃねーかよ!!

今にも平伏しそうな彼女を苦々しく見つめながら、咲弥は執政家世嗣の安易な行動を呪った。
これは今度会った時、厳重に抗議しなくてはならない。短い誼でも分かるくらい、彼はとにかく直截的で、遠回しに言うとか気を遣うということがほとんどできないのだ。特に使用人に対しては。
部下や戦いに関わる者ならそれなりの気遣いもできるだけに、咲弥は彼の手抜かりがむかついて仕方なかった。或いは世話をしてくれる者に甘えているだけなのかもしれないが。

「……あー。咎め、とか、そういうことじゃなくてさ」
「はい」
「うん、俺は別にイルゼの文句言った訳じゃねーんだぜ?そこ一番重要だから」
「分かっております」

目を上げないまま答えるイルゼに今度こそため息をつき、咲弥はとりあえず腹を決めた。
どちらにしても、こんな息詰まる思いを繰り返すのも限界に近い。ここらではっきり決着をつけておかなくては。

「……別にさ、イルゼが気に入らない訳じゃないんだよ。すごく良くしてくれるのは分かってるし、気は利くし、頭いいし。
 あ、そーいえばイルゼ、兵士の中じゃ人気ナンバーワンだったぜ!やっぱりなーって感じだけど!」
「……………」
「んで、イルゼの方は完璧なんだけど。どうも俺の方に問題があって」
「……サクヤ様に、ですか?」
「それそれ。その『サクヤ様』からしてもう違和感なんだよ。俺は王族でも貴族でもなくて、ただの一般市民なんだから。
 言うなればイルゼのが身分あるのに、どうも収まりが悪いっつーか居心地悪いっつーか」
「けれど……サクヤ様はゴンドールにとって、大切なお客様ですから……」
「や、呼び名はまだいいにしても、食事も着替えも一人でやってきたから人に手伝ってもらうの慣れねーんだ。
 息苦しいってのはそういうことであって、イルゼが悪い訳じゃない。謝ることないよ」
「……では」
「ん?」
「私がこのままお仕えしても……構わないのですか?」

そこでようやく顔を上げた少女は、見たことがないくらい不安げな瞳をしていて。
いつも毅然と背筋を伸ばしている彼女の年相応な一面に、咲弥は苦笑しながら思わずその頭を撫でた。

「もちろん。イルゼがいなかったら俺、ベッドの中でさえ鎧着てろって言われたからさー」
「そ、そんなことはさせません!」
「うん、よろしく。多分いろいろ勝手が違うだろうけど、なるべく畏まらない方向で頼む」
「はい!……それでは、お食事はここに置かせて頂きますね。あの、他に御用はありませんか?」
「ん?えーと」

給仕を済ませた彼女が物足りなさそうに訊くので、何かなかったか考えてみる。
しばらく悩んで、そういえば数日前からやろうしていたことがあったのを思い出した。

「あーそうだ。悪いんだけど、ちょこっと布きれ分けてくんないかな?できれば肌触りよくて吸湿性あるやつ」
「布、ですか?何か必要な物でも?」
「替えのショーツ作ろうと思って。洗濯繰り返すのめんどいから」
「しょ……?」
「下着だよ。こっちの使ってもいいんだけど、やっぱ三角で肌に密着してないとどうも穿いてる気がしなくってさー。
 ゴムとかないから紐ぱんつになっちゃうけど、まあたいして違わないだろってことで」
「……よく分かりませんが、よろしければ私が仕立てて参ります。おおよその形だけ教えていただければ」
「あ、そう?んじゃお願いしようかな。裁縫とかいまいち上手くないし」
「はい、喜んで!」

あまりにも嬉しそうな返事が返ってきたので、咲弥は少し驚いて彼女を見返した。
どうやら、彼女は性質に於いてファラミアの同類人の役に立つことを自分の喜びとする徳の高い人間、のようだ。
ボロミア付きとしてはさぞかしうまくいっていただろうな、と心の中で呟いて、小さく笑う。彼の多岐に渡る要求を献身的にサポートするだけでなく、節度を欠いた時は年齢や身分に関りなく叱られてしまっただろうから。
もしかして、このあいだ行儀がどうとか言っていたのは彼女の倫理教育の賜物かもしれないと思うと、笑いがこみ上げて仕方なかった。

イルゼがぱんつ製作という特命を帯びて退出した後、咲弥は外の景色を眺めつつ美味しく朝食をいただいて、それから服を着替えた。
用意された普段着は、鎧ほどではないがそれなりに厚いもので、薄着を好む咲弥にはどうしても着込みすぎになってしまう。
それでも動きにくくはなく機能的で、湿気がない気候もあいまってさほど不満は感じなかった。強いて言えば、必ず羽織れと言われているマントが学芸会のようで恥ずかしいくらいか?
(でもレンジャーと同じものだからちょっと嬉しかったりもする)

「さって、と。今日は何しよっかなー」

本日、執政家の兄弟はそれぞれ執務に忙殺されているらしい。兄は執務室に籠りきりで書類仕事、弟は数日前から小部隊を率いて南イシリアンまで偵察に出ている。今日帰る予定だが、時間は遅くなるということだ。
二人のどちらかがいれば、話を聞かせたり字を教えてもらったりしてそれなりに忙しい咲弥だけれども、どちらもいない時は好きに行動していいことになっている。
ボロミアが本館に立ち入る許可を(どさくさに紛れて)取ってくれたので、彼の執務室を覗いたり行ったことのない所を探検したり、選択肢はわりと豊富だった。
とりあえず朝食のトレイを賄い所に下げに行き、いつも通り『お客様はそんなことをしなくていいのです』と怒られてから、咲弥はぶらぶらと本館に向かった。



「ども、お邪魔しまーす」

考えた末、向かったのは本館を守る兵士たちの詰め所だった。
軽い口調でひょこりと顔を出すと、そこにいた者たちは皆笑って出迎えてくれた。
宴会の時には散らかり放題だったここも、今はもう普段の几帳面さを取り戻している。同じ部屋とは思えねー、と感心しつつ辺りを見回した咲弥は、目当ての姿を見つけてぱちんと指を鳴らした。

「あ、いた!エルラドー!」
「……サクヤ様!?」

呼ばれて振り向いた彼に、ぱたぱたと駆け寄る。
壁に立てかけてある剣の手入れをしていたエルラドは、慌ててその場に跪いた。

「よかった、ファラミアと一緒に出掛けてるかと思ったけど。来てみて正解だった〜」
「は、何か私に御用でしょうか。お呼び下さればお部屋まで出向きましたのに、このような所までご足労を」
「出向かれるようなことじゃねーっつーかまずそのお辞儀やめろ。おまえはイルゼか!」
「は……?」
「いいから。ほら、膝なんかついてんのあんただけじゃねえかよ!」

その言葉通り、回りの兵士たちは目を伏せたり頭を下げたりはしているものの、ここまで畏まっている者は一人もいない。
宴会の時は大騒ぎの渦中なのもあって気にしなかったが、素面の日常でこの姿はある種異様だった。
恥ずかしいから普通に話せと言い募る咲弥に、エルラドは真面目な顔で首を振った。

「他の者は関係ありません。サクヤ様はゴンドールの賓客であるばかりか、私の敬愛する大将お二人と懇意の方です。
 本来ならば直接お声を掛けていただくのも恐れ多いこと、とても対等になど話せません」
「………。ちょっと待ってろ」

咲弥は苦々しい顔でその場を離れると、手近にいた兵士を一人捕まえて、がっしりとその肩を抱き込んだ。

「なぁ。あいつって普段からああなの?」
「は、はあ……エルラドは祖父の代から執政家のそば近く仕えておりますから、特にそのあたりの意識は相当なものかと」
「じーさんの代から側近てこと?じゃあ結構なお家柄なんじゃねーのか?」
「それは勿論そうです。先代エクセリオン二世の御代には、勲功として執政家ご領地の一部を賜ったほどですから。
 今でもエミン・アルネンの南側の丘陵地には、彼の生まれた家と土地が残っています」
「それなら、尚更……」
「もっとも数年前、モルドールの侵攻により家系は離散したらしく……今や住む者もなく放置されていますが……」
「え」

気の毒げに小声で呟いた兵士の言葉を聞いて、咲弥は思わず絶句した。

モルドールの侵攻にあって、家族が離散?家が放置されている?

けれどエミン・アルネンといえば、ここミナス・ティリスからそう遠くなかったはず。確か南イシリアンの、指輪戦争後にファラミアが大公として居を構える場所だ。馬なら数時間とかからない。

「……そんな」

そんな近くにも住めないほど、この国は脅かされている。それをようやく悟って、咲弥は呆然と立ち尽くした。
偶然そのことを聞かなかったら、自分はどうしていただろうか。
きっと『あんたみたいな名家のご子息が、ただの客に膝なんかつくなよ』と口走っていたはずだ。
彼はそれに何と返すか。きっと『名家でも貧家でも、人を敬うのに理由は要りません』などと答えるだろう。
そして自分は、彼の傷を抉ったことに気づかなかったに違いないのだ。

事情を知らなかった、というだけではない。知らないのはむしろ、この世界の現状。
未だ白の塔から出たことのない身では、外の様子はせいぜい天気くらいでしか実感できない。だが暗黒の影はすぐそこに存在しているのだ咲弥が知らないだけで。

「……くそ」

何も知らない自分が急にもどかしく思えて、小さく唇を噛む。
知っていても何もできないけれど、少なくとも傷ついている者に無神経な言葉をかけたり、偵察に出ている者の安全を軽視したりはしないだろう。
今まで、咲弥はこの世界の深刻な面を知りすぎないように心がけてきた。どうせいつかは帰ってしまうのだから、知らなくていいことは知らないままの方がいいと思ったのだ。
だが、本当にそれでいいのか。元の世界に戻るまで、それで暮らしていけるのだろうか?

とりあえず礼を言って兵士から離れると、咲弥はまだ跪いたままのエルラドに向かってしゃがみ込んだ。
ここに来たのは、彼に剣の稽古をつけてもらうためだった。一応武道の心得はあるものの、実戦となるとまったくの素人。最低限自分の身を守れる程度には鍛錬しないと、いざという時に困ると思ったから。
けれどそれは、外の現状を知るためではなかったさっきまでは。

「サクヤ様?如何されましたか?」
「エルラド。……あの、もし時間あったら」

少し迷いながら言いかけた時、突然、叩きつけるようなドアの音と飛び込んできた叫びが重なった。

「ファラミア様が帰還されたぞ!」

途端に、部屋中の人間が一斉に立ち上がる。
予定よりずいぶん早いんじゃねえの?とのんきに構えかけた咲弥は、周りの殺気立った雰囲気にびくりと体を揺らした。

「何があった!?」
「ハラドの一隊が、影の山脈からイシリアンへ…!」
「ハラド!?オークではないのか!?」
「ファラミア様はご無事か!負傷者は!」

「……っ!」

全てを聞く前に、咲弥は使者の脇をすり抜けて走り出した。
ハラドは南方の国だ。以前よりゴンドールとは敵対関係にあるが、侵攻してくるならば南からのはず。
影の山脈、すなわちモルドールの方角から攻めてきたとすれば、モルドールと手を組んだのかもしれない。
でも、その盟約は物語では指輪戦争の時だった。ということは、今はもうその時期に入っているということ?それとも自分が知っている物語と現実は違う?

ああ、そんなことどうでもいい。
ファラミアは無事なのか。レンジャーのみんなは?
ファラミアがここで死んだりするはずない、そんなはずはない。
でも、まさか。まさか。

夢中で城から飛び出すと、枯れた白の木のある正面の庭を抜けて、第七層の門が見えた。
そこに偵察に出ていた一隊が帰還している。服が汚れていたり馬の鬣が乱れていたり、怪我をしている者もいるようだが、皆一様に大事はないようだった。
その中でも一番後ろ、隊列の殿に、見覚えのある月毛の馬。

「ファラミア!!」
「来るな!」

叫んで駆け寄ろうとするのを、鋭い声が制止する。
既にボロミアが来ていたことに初めて気づいた咲弥は、足を止めて彼を見上げた。

「なんでだよ!来るなって、まさか怪我したのか!?」
「いや、していない。大丈夫だからおまえは館に戻っていろ」
「ごまかすな、怪我してるなら病院へ連れてかなきゃなんねえだろ!ファラミア、今すぐ

半ば体当たりをするようにボロミアを押しのけて、その陰になっていたファラミアの前に出る。
一瞬、息を呑んだ。

ファラミアは支えられることもなく一人でしっかりと立っていて、見える範囲には大きな傷も異常もない。
けれどその外見は、傷のなさが逆に不自然なくらい酷く汚れている。髪から鎧、服、矢筒やマントに到るまで、あちこちに未だ乾いていない大きな染みがこびりついて


ビュ、と目の前を強い風が吹き通った。


「……怪我はありません」

固まってしまった咲弥に、ようやくファラミアが声を掛ける。
でも、それは、と声に出さずに問うと、まるで泥土かチョコレートに突っ込んだような掌を隠すようにぐっと握って、彼は小さく呟いた。

「大丈夫。私の血ではありませんよ」
「………!」

表情はいつものように笑っていたけれど、瞳がどうしようもなく切なかった。
そのまま、見つめ合ったまま何瞬か沈黙が流れる。
居たたまれなくなったボロミアが、何事かを言い繕おうとした時。

「……ファラミ、ア?」
「……はい」
「ちょ……あのさ。悪いんだけどちょっと手ぇ出して?」
「……………」

ボロミアが止める間もなく、ファラミアは素直に手を差し出す。
敵の血にまみれたそれをまじまじと眺めてから、咲弥はいきなりその手を取った。

「サクヤ!?離して下さい、あなたまで汚れてしまいます!」
「…………うーん」
「サクヤ?……あの」
「あ、よかった。なんか全然平気だ」
「え?」
「何?」

必死で手を引こうとしていたファラミアと、らしくなく狼狽えていたボロミアが、二人揃ってぽかんと口を開けた。
それを交互に見ながら、咲弥はくすりと笑う。

もしかして、触れたら怖くなってしまうんじゃないかと思った。
この血塗れの姿が、絞れそうな程の返り血を浴びて帰ってきた彼が、知らない人に見えてしまうかもしれないと。
けれど。目に前にいる人間は、間違いなくファラミアだ。触りたくないとは全く思わない。
単に感覚が麻痺しているだけかもしれないが、それならそれでいい、と咲弥は思った。
少なくとも、こんな痛い目をしている人や心配している人を傷つけるよりはよっぽどマシだ。GJ俺の脳。

「おかえり、ファラミア」

笑って頬の汚れを拭うと、隣でボロミアが大きく息を吐いて緊張を解いた。

 

◇     ◇     ◇

 

負傷者は病院へ、そうでない者は休息を取りに、指揮官たちは上への報告と、各人がそれぞれに散会した後。
人気のなくなった第七層の見張り台で、咲弥は風にそよぐ草原を見ていた。

「きれーだなー」

少し前、初めてここに来た時は、この壮大なパノラマを眺めるのが辛かった。
五感が崩壊したような気がして立ち眩みを起こしてしまうほど、こんな景色に馴染みなんてなかった。
けれど今は、この風景も見慣れている。この先どんな奇異なことがあっても、きっといつかは慣れてしまうだろう。

そう、関わらずにいるなんて、できるわけがないのだ。知らなくていいことなどひとつもない。
自分は今、確かにここで生きているのだから。

元の世界へ帰りたいのは変わらないけれど、ただぼうっと待っていても戻れる保証なんかない。
ならば、ここできちんと地に足をつけて、自分の力で立たなくては。
現状をこの目で見て、平和ボケした意識を切り替え、自分の身は自分で守らなければならない。

咲弥はふいと視線を外すと、兄弟から付き添うように言われて控えているエルラドを振り返った。

「エルラド。さっき言いそびれたけど、時間あったら剣の稽古に付き合ってくんないかな?」

まず、城の外へ出られるようになること。
それと、自分が食べている分は働くこと。
そして迂闊な行動を避けるためにも、この国で記録されている歴史や世相を調べること。

鍛錬と仕事と勉強、まるで自衛隊並みだなぁと間抜けなことを考えながら、咲弥はエルラドに『よろしくお願いします、師匠』と頭を下げた。

 

つづく 

 

 

 

急転直下、思い切りシリアスになってしまいました。
しかし文章全て行き当たりばったりで出てきたのでなんともかんとも。エルラドの過去とかハラドの軍隊とか、直前の行まで考えてなかったことばかりですw
この話書いて、プロットをきちんと作ろうが何も考えずにいようが、完成には別に変わりがないことを悟りました。創作の神様つーか小人さんがんばってんなー。
でも今回はファラミアの素敵さがメイン(?)で、カコイイ〜神様ありがとう!と思って妹に見せたら、「ボロミアの来るな!がかっこよすぎ」と言われてしまいorz。ボロミアの出番ほぼそれだけなのに……!一言に負けるファラミアってどうなの。ファラミアもいいじゃん……。

さて、ストーリーはなんだか知らない間に進んでいる感じ。
こんな真面目な話にするはずではなかったのですが、どうも自分の中の執政兄弟を書きたくなったようです。小人さんが!
今後はどうしようかなあ。考えてるのは「ローハンに行かせたい」と「ファラミアと遠乗り行かせたい」しかありません。ほぼ願望……。

あ、ちなみにハラドとモルドールが初めて盟約結んだのは指輪戦争の時?とか、エミン・アルネンに家があるとか、そういうのは知識半分捏造半分なのでよろしくです。
エミン・アルネンが執政家代々の領地ってのは確かそうだったはずだし、ファラミアが大公となってそこに住むのも本当ですが、細かいところに裏を取ってないので……UTやらHoMEやら、指輪関係には資料が多すぎるので確認は難しいです。資料間にも矛盾あるしなあ。
本編で書かれていることは咲弥の覚えてるだけの知識ってことで、私も細かい所はわざわざ調べずに記憶だけでいこうと思いますw