MANA's ROOM〜トップへ戻る
Total    Today    Yesterday   拍手メールサイトマップ
更新記録リンク掲示板日記
ときメモGS別館 アンジェ・遙時別館 ジブリ別館 ごちゃまぜ別館
 
 


「薩摩の二英傑」番外編(大久保ルート1)

※をマウスオン/クリックで標準語訳(適当)が出ます

【主劇】小娘


「お嬢さぁ、お願いしもす!ほんのこったのんみゃげもす!!」お嬢さん、お願いします!本当にお頼み申し上げます!!
「むぐっ」

突然、そう叫んで頭を下げた半次郎さんに、わたしは食べていた大福を喉に詰まらせそうになった。
ぐほっと女らしさのかけらもない音が喉から出て、目の前のお茶をひっつかむ。
隣で一緒におやつを食べていた女中さんが慌てて背中を撫でてくれて、ようやく人心地ついてから、わたしは涙目で犯人を見上げた。

「っは、半次郎さん!いきなり飛び込んでこないでくださいっ!」
「す、すいもはん!思め切っせ来っもんじゃで、つい」す、すいません!思い切ってきたもんだから、つい
「はああ、びっくりした……。どうしたんですか?なにかありました?」
「は。そいが、大久保さぁのこっじゃで……」は。それが、大久保さんのことですが……
「大久保さん?帰ってきてるんですか?」

わたしはその言葉に首を傾げた。
大久保さんは、ここしばらくとても外出が多くなった。薩摩の他の藩邸や長州藩邸、土佐藩邸、他にも御所とか公家とかあちこち渡り歩いているようで、なかなか話もできない日が続いている。
それでも帰ってきた時は必ず顔を見せてくれてたから、わたしは今も外出中なんだと思ってたけど……。

「実は、お嬢さぁには知らせっな、ち言わるって」実は、お嬢さんには知らせるな、と言われていて
「中村様!」

半次郎さんが言いかけると、女中さんがたしなめるように遮る。
いくらわたしでも、その意味は分かった。女中さんも大久保さんが帰ってることを知ってたんだ。
でも、どうして?今まではそんなこと全然なかったのに。

「半次郎さん、どういうことですか?どうしてわたしには知らせちゃだめなの?」
「お嬢様、大久保様の言いつけですから」
「あ……そうですよね。えーと、じゃあわたし、ちょっと出てきます。お片づけは後でやりますから!」
「お、お嬢様!」

はらはらと気を揉む女中さんを置いて、わたしは半次郎さんの背を押して部屋を出た。


「お嬢さぁ、すいもはん……」お嬢さん、すいません……

人気のない場所を探して庭に降りると、半次郎さんが申し訳なさそうに身を縮こまらせて謝ってきた。
きっと、女中さんがいるのに話したことを言ってるんだろう。わたしは別に言いつけとか気にしないし、むしろそれに反して話してくれた半次郎さんの方が心配だったので、小さく首を振って答える。

「ううん、わたしはいいんです。それより大久保さんがどうかしたんですか?いつから藩邸に?」
「そいが……三日前には」
「三日!?三日もいたんですか!?でもわたし、一度も見てないですよ?」
「三日前から、ほとんど部屋を出らんのです」
「え……」
「飯も食わん、風呂も入らん、寝いもせん。あんままではひっ倒るっも遠なか。
 おいたっがどげん言っもせからしのひっ言で、ばったいならんです」飯も食わない、風呂も入らない、寝もしない。あのままでは倒れるのも遠くない。
俺たちがどんなに言っても忙しいの一言で、どうしようもないんです


半次郎さんが眉尻を下げて訥々と語る内容に、わたしは目を見開いた。
あの大久保さんが?ごはんと睡眠はいつも少ないけど、お風呂!お風呂だけは絶対入りそうなのに!
三日お風呂に入ってない大久保さん、というのが予想できなくて、脳内でぐるぐるといろんな想像をしながら問い返す。

「なんでそんな……いくら忙しいからって……」
「お嬢さぁに心配さすっとは申し訳なかじゃっどん、あんまい酷いよしやっで、こん上はお嬢さぁに頼んしかなかと……」お嬢さんに心配させるのは申し訳ないんですが、あんまり酷い様子なので、この上はお嬢さんに頼むしかないと……
「あ。それで、お願いします、なんですか」
「じゃっど。お願いしもす、大久保さぁをちっとでん休ましっやっちくいやい!お嬢さぁなら大久保さぁも許すと思ちょいもすっで!」そうです。お願いします、大久保さんを少しでも休ませてやってください!お嬢さんなら大久保さんも許すと思いますから!
「う、うーん」

半次郎さんの期待に応えたいのはやまやまだけど、お仕事で忙しい、んだよね。
お仕事のことになると、わたしはあんまりタッチできないからなぁ……。内容が分からないのに、そんなお仕事なんか休んでください、とは言い辛い。
大久保さんはあれでもすっごいえらい人だから、やってることも女子高生の想像を軽く越える。本当かどうか分からないけど、『今これをやらないといずれ日本が無くなる』っていうお仕事も、実際あるみたい。
それは大久保さんにとってライフワークだから、ますます休めとは言えない。

───でも。どんなお仕事でも、三日も休まずにやってるなら効率はかなり落ちてるはずだ。それ以前に、お風呂に入ってないのが大ダメージのはず。
それに、あのお茶屋で大久保さんは『休養を取る時はおまえが世話を焼け』って言った。それはわたしには休めって言う権利があるってことだよね?
そこまで考えて、わたしは心配そうに見つめてくる半次郎さんに頷いた。

「わかりました。聞いてくれるか分からないけど、やってみます!」

 

◇     ◇     ◇

 


消化に良さそうなふかふかのお饅頭と、柔らかめに作ったスフレケーキ。それから、砂糖じゃなくはちみつで甘くして生姜をいれた、ジンジャーホットミルク。
考えに考えたメニューをお盆に載せて、わたしは大久保さんの部屋に向かった。
もちろん、お湯で熱くしたおしぼりも忘れずに。

「大久保さん」

部屋の外から呼びかけると、かたりと小さな音がして、中に人がいるのが分かる。
しばらく辛抱強く待っていると、やがて諦めたように『入れ』と声が聞こえた。

「失礼します」

すっと障子を開けて、中に入った……とたんに、思わず足が止まった。
なんというか、空気が淀んでる。汗くさいとかそういうことはないんだけど、長い間換気をしていない書庫みたいな、ウン千年ぶりに開いた地下遺跡みたいな、どんよりとした空気がまとわりつく感じ。
色さえ付いていそうなその空気の奥で、大久保さんが文机に向かっているのが見えた。

「うっわ!」
「……第一声が、それか」

こっちを向く時間すら惜しいといった感じの、不機嫌ゲージMAXな声がかけられる。
いや、だって。これはすごいよ。半次郎さんが泣きついてきた気持ちがよく分かる。
部屋には色々な本や書状、半紙なんかが散乱していて、端の方には多分着替えたんだろう、服らしき物も寄せてある。
女中さんも部屋に入れないほどピリピリしているのだと知って怯んだけど、でもこれはいくらなんでもひどい。

わたしは入口の障子を少し開けたままにして大久保さんの横を通り過ぎると、奥庭の方の障子にも隙間を作った。
部屋の中に風が通って、少しだけ淀みがましになる。
それから仕事に関係なさそうな服や手ぬぐいやさらし、持ってきただけで手をつけられた形跡もないお膳なんかを廊下に出して、その辺を軽く拭き掃除した。

辺りが幾分小綺麗になったところで、いよいよ大久保さん周辺に取りかかる。
書き損じと分かる紙は一カ所にまとめ、開いたまま伏せてある本は並べて、今にも蹴っ飛ばしそうな墨や半紙や油の予備は部屋の隅に避けておく。
わりと大胆に片づけを進めても、大久保さんは何も言わずに黙々と書状に向かっていた。

───これは、許されてるというより反応する暇が惜しいんだな……。

多分、女中さんでも半次郎さんでも、こうやってずかずか入って勝手に片づけることはできたと思う。けど、まず許可を得ないとだめな立場の人にそれは無理。
その点、わたしは『世話を焼け』って言質を取ってるから、勝手にやったって問題ない。なるほど、だから半次郎さんはわたしに言ってきたのか。

でも、次の段階はだいぶ難しそうだ。手を止めろって言ったら、きっとそんな暇はないって返される。
さて……どうしようか?
考えつつ、大久保さんの斜め横に座って、じっとその姿を眺めた。
少しだけ見える横顔は本当に疲れていて、顔色も真っ白に近い。今すぐ後ろに倒れたって不思議じゃないくらい。
いつもはぴしっと背筋を伸ばして机に向かうのに、さすがにこたえているのか、珍しく胡座で片膝を立てたまま、片肘を書状の隙間について顎を支えながら筆を動かしてる。
わたしはとりあえず、ジャブを繰り出してみた。

「大久保さん」
「……なんだ」
「分かってると思いますけど、少し休んでください」
「要らん。今忙しい」
「消化にいい食べ物と飲み物と、おしぼりを作ってきました。拭いてあげますから、こっち向いて」
「無用の心配だ」

う、手強い……。いつもなら『小娘が私の体を拭くのか?どこまで拭くつもりだ?』みたいにからかってくるのに、まったくとりつく島がない。
わたしはにじり寄りながら、少しだけ言葉を強くした。

「無用じゃなく見えるから心配してるんです」
「要らん」
「大久保さん、わたしに世話を焼けって言いましたよね?言葉には責任持ってください」
「これを書き上げたら休む」

そう言う大久保さんの周りには書状の書き損じが散乱していて、話す間にもどんどん増えていく。
どう見たって遅々として進んでない。きっともう頭が回ってなくて、惰性で最後までやろうとしてるんだ。
はあ、とため息をついて、次に何を言うべきか考えていたわたしは、ふと目についたことを思わず口に出してしまった。

「書き物をするならするで、立て膝はお行儀が悪いですよ」

言い終わる前にまずいと思った。確かに正論だけど、今そんなこと言っても……!
案の定、大久保さんはじろりと目だけを動かしてこちらを睨みつけた。
こ、怖っ!目が据わってる!本気で怖いよー!

「……………」
「あ、あのっ、ごめんなさい。母の口癖だったので、つい……」
「……小娘の母御が?」

少し気がそれたように目を丸くするから、突っ込むならここだ!とばかりにわたしは居住まいを正して、お母さんみたいにまっすぐに大久保さんを見つめた。

───『利通さん』」


【薩摩藩】大久保 利通


「利通さん」
「……!?」

小娘が突然そう呼んだ時、私は思わず瞳を見開いて呆然としてしまった。
なんだ?今、どういう話の流れでそうなった?
疲れすぎていて、頭が上手く回らない。もしや私の関知していない会話があったかと思ったが、なんとも思い出せない。
驚く私を余所に、小娘は澄ました顔で言葉を続ける。

「立て膝は、お行儀が悪いですよ。お直しなさい」
「……………」
「お休みしている時は、どんなにだらけていても構いませんけれど、お仕事やお食事の時はきちんとなさってください。
 あなたがそんなでは、娘にも悪い影響を与えてしまうでしょう?」

そこまで聞いて初めて、それが小娘の母御の真似なのだと気づく。
いつもの小娘よりも凛とした雰囲気で、笑みを絶やさず叱る様は、有無を言わせない空気を持っていた。
戯れ事を、と思いつつも、根の生えたように凝り固まっていた体が自然と正座をし、小娘に向き直る。

「利通さんのお仕事が大切なのはわかりますが、疲れている時にいくら続けても能率は上がりません。
 まず、少し休憩なさってください」
「……………」
「それでなくても、毎日毎日根を詰めすぎです。倒れでもしたら周りの者が大変だといい加減気づきなさい。
 利通さんにしかできない仕事だからこそ、休むんですよ?その時間も作れないほどあなたは無能なのですか?」
「……………」
「って、母はいつも父に言ってて……」
「く、は、はははは!」

小娘が言い終わらないうちに、私は自然と漏れ出る笑いを抑えずに吐き出した。
大声で笑う間に、先程までの焦燥も重苦しさも、だんだん薄れていく心地がする。
一頻り笑った後、私は肩で息を整えながら、ぽかんと口を開けて呆けている小娘を見やった。

「小娘の母御は、厳しくも優しい方だな。では、お言葉に甘えて休ませてもらおう」
「え!?」

ごろりとその場で横になり、淡い色の着物に包まれた膝に頭を置く。
下から見上げると、小娘はタヌキのように間抜けな表情のまま、さっと頬を染めた。
ふむ。いつも言い返してくるか、意味が分かっていないかのどちらかしかない小娘の、こんな顔は珍しいな。
いや……もしや、私の所行の方が珍しいのだろうか?

そうだな、そうかもしれない。
ただ女に名を呼ばれ、偉そうに説教されただけで長らく引きずっていた憂いが消し飛ぶとは、私も随分と安っぽい思考回路をしているものだ。
───まるで我らに娘がいて、妻と娘のために身を粉にして働くさまを叱られているようだと。
そんなことを考えたとは、到底言えることではない。

「お、大久保さんっ!?な、なに、」
「やかましい、何だ。小娘が母御役で私が父御役なら、こうしても不思議はなかろう?」
「そ、それはそうですけど、そうじゃなくてっ」
「一刻ほど眠る。『あらーむ』を掛けて、確実に起こせ。訪ねてきた者は皆追い返して構わん」
「ぇ、あ、はい……」
「静かに……そこでじっとして、いろ」

そう言って、私はまだ驚き顔をしている小娘の姿を目に焼き付けてから、瞼を閉じた。

 

◇     ◇     ◇

 

徐々に、意識が微睡みに落ち始める。
おろおろと困っていた小娘も、落ち着いたのか静かになり、そっと私の頭に手を置いた。

「……小娘」

ほの温いその感触が髪を掻き分けるのを感じながら、私は極小さな声で呟いた。

「私は……しばらくの間、藩邸を空けねばならん……」

それは、ここのところ胸の内でずっと持ち回っていた言葉だった。
同盟締結のため、最後の詰めと言うべき領内での諸侯の説得。それには、私が直々に赴く必要がある。
説得と同時に、不満分子や敵方と通じている者がいないか、土壇場で問題が起こりはしないかを、予めこの目で確認しておかねばならない。
三度目の機会は、おそらくやってはこないのだから。

だが……私と半次郎がいなくなれば、その間小娘の後ろ盾はなくなる。
他にも親しい藩士はいるから問題はないとは思うが、万が一、取り返しのつかない相手にいつものような無茶な振る舞いをしてしまったら、その場で手打ちにされることもないとは言えん。
おそらく、今津や他の者にはこやつは御し得ない。坂本君からの大事な預かり者を危険に晒してしまうかもしれない。

───いや。そうではない。
たとえ半次郎を残し小娘を任せることができたとしても、この懸念は拭えまい。
私のいない間にこやつが消えてしまうのではないか、どこかへ連れ去られるのではないかと、根拠のない可能性が胸に浮かぶ。

これは……不安……なのだろうか?
私は思わず自嘲した。
薩摩の大久保ともあろう者が、小娘一人いなくなるのが不安で、留守を告げるのすら気後れしていたなどと。
出発の間近になって、このような睡魔の襲う最中でないと、言い出せないなどと。
実に情けないことだ。

「しばし薩摩へ戻り、やらねばならんことがある……」
「……はい」

私の言葉に、小娘が静かに頷いた気配がした。
重い瞼を上げると、心配そうな顔が覗き込んでいる。

「道行きは危険ではないと聞いていますけど、十分気をつけて行ってきてください」
「……何?」
「ご無事をお祈りしていますね」

そっと前髪を梳き上げられ、暖かい手ぬぐいが当てられる。
久しぶりに両目で見た小娘は、どう見てもこのことを今初めて聞いたようには見えなかった。

「知っていたのか?」
「あ、はい。藩士さんたちが準備されていたので」
「……………」

誰だ。小娘には悟られるなとあれほど厳命したのに、あっさり露見させた奴は!
後で見つけ出して、それ相応の罰を与えてやらねばならん。

「……だが、私がいない間、大丈夫か」
「大丈夫、ってなんですか。子供じゃないですよ」
「そんなことは言っておらん。だが小娘の行動は、ここでは子供と同じかそれより性質が悪い。身に覚えがあるだろう」
「う……」
「私だけではなく、半次郎もいなくなるんだぞ?」
「護衛なんだから当たり前じゃないですか。むしろ半次郎さんが残る方が心配です」
「それはそうだが……では私のいない間、坂本君にでも逗留してもらうか?」

半次郎がそれを聞いたら、私を笑うだろう。
会う度に小娘に会わせろと言い寄ってくる坂本君を、幾度となく理由づけて遠ざけてきた癖に、こんな時だけ勝手良く使うのかと。
だが、小娘はその言葉にふわりと笑って、私の顔や首を拭きながら静かに答えた。

「大丈夫、ですよ」
「……」
「外にも出ないし、お掃除もお洗濯もお休みします。ちゃんと、ここでお帰りをお待ちしてます」
「……そうか」
「はい。だから必ず、無事に帰ってきてくださいね。約束ですよ?」

小娘の細められた瞳に、微かに私と同じ色が見えた。
ああ。小娘も、私がいなくなるのではと不安に思っているのだろうか。まさかそんなことは有り得ないと思いながらも、この温もりが消えてしまったらどうしようと、埒もない想像に心を痛めているのだろうか?

「……分かった。約束しよう」

それを確かめる気も、告げる気もないけれど、同じならいいと心の隅で思った。
今はまだ───それでいい。

「それから……、二人の時は、私を名で呼べ」
「え?」
「おまえに名で呼ばれると、良い塩梅に気が抜ける。……休むには丁度、良い」

己の物言いに頬が緩むのを感じながら、私は再び目を閉じた。


【主劇】小娘


それからというもの、大久保さんが無茶をする時には、わたしには奥の手ができた。
意固地になって仕事をしている時でも、名前を呼んでお母さんの真似をすると、ため息をついてしぶしぶ休養を取ってくれる。
何故かはわからないけど、お母さんの真似をすると逆らえないみたい。大久保さんのお母さんはもう亡くなっているそうだから、懐かしいのかもしれない。
ふふ、そうだとしたら小さい子みたいで、ちょっと可愛い。

まあ、時々女中さんや藩士さんに『一体どんな手を使っているのか』とか聞かれて困っちゃうんだけど……でも、本当のことを話したら大久保さんも恥ずかしいだろうし、わたしだって恥ずかしい。
答えられないでいたら、そのうち『大久保さんの扱いはわたしに任せろ』という風潮が広まって、それを聞いた大久保さんは苦虫を噛み潰したような顔でむっすりと黙ってしまって。
結局、休むのはあのピアノのある秘密の部屋で、というのが常になった。

「全く、何故私が小娘如きに操られているかのような噂が流れる。屈辱だ、耐えきれん!」
「はいはい、耐える前にこれをどうぞ、利通さん」
「おまえもおまえだ。少しは否定せんか!」
「だって、なんて言えばいいんですか?疲れてる利通さんは膝枕でないと寝ません、って言えば?」
「ふざけるな!私は童か!」
「でしょう?だったら放っておけばいいじゃないですか。ここなら誰も来ませんし、後でピアノも弾きますよ」
「……………」

利通さんは苛々と唇を噛みながら、膝から少し頭を起こしてジンジャーホットミルクをがぶりと飲んだ。

 

つづく?

 

 

 

 

すみません。イヤミ成分を込めるのを忘れました。
本当は「薩摩の二英傑」のお話として書いていたのですが、気づくと大久保さんがすっかり出来上がっていまして……。皆様ご存知の通り、本家他キャラルートでの大久保さんの献身ぶりというか、「報われないのに小娘を想いすぎ」なところにズガーンときていたので、二次創作でまで横恋慕、しかも相手が部下かよ!!という苦境シチュエーションにはもっていけませんでした。

なので一応、「薩摩の二英傑」は共通ルートから半次郎ルートと大久保さんルートに分かれるイメージにすればいいかな、と。本編は今5話までアップしていますが、次の話が半次郎ルート突入な感じになる予定ですので、5話目までが共通ルートってことでしょうか?そうなのでしょうか?(疑問形)

しかし、半次郎ルートがガンガン書けているのはまあいいとして、大久保さんルートも実は最終話というかカップル化するお話は完成済みです。大久保さんに銃を向ける龍馬さんwが出てきますヤホー!
龍馬さん大好き。幕恋で一番優しいのは以蔵だけど、一番優しくしてくれるのは龍馬さんだと思う。彼の愛はでっかいので、小娘ちゃんが他の男を好きでも変わらず優しくしてくれると思います。

ちなみに大久保さんの愛は針穴ストレートなので、小娘ちゃんが他の男を好きな場合は、違うところに糸を通している苦痛に苛まれながら一生懸命小娘ちゃんを想っているイメージです。
不器用な男です。

 

 

【ツールチップが使えない場合用の薩摩弁解説リンク】

お嬢さん、お願いします!本当にお頼み申し上げます!!

す、すいません!思い切ってきたもんだから、つい

は。それが、大久保さんのことですが……

実は、お嬢さんには知らせるな、と言われていて

お嬢さん、すいません……

飯も食わない、風呂も入らない、寝もしない。あのままでは倒れるのも遠くない。
俺たちがどんなに言っても忙しいの一言で、どうしようもないんです

お嬢さんに心配させるのは申し訳ないんですが、あんまり酷い様子なので、この上はお嬢さんに頼むしかないと……

そうです。お願いします、大久保さんを少しでも休ませてやってください!お嬢さんなら大久保さんも許すと思いますから!