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「駄犬五題」
おまけ

 

 

「おーい、〜。もう朝だぞー、さっさと起きろー」

適当な節をつけて幼なじみを呼びながら、将臣は渡殿を歩いて彼女の部屋へ向かっていた。
賄い所から失敬してきた総菜をくわえつつ、ためらいもなく襖を開ける。

、起きろよー。おまえが起こせって言ったん……」

だろ、と言いかけて。
中の光景を見て、口を閉ざす。
一瞬悩んでから、すたすたと彼女の寝ているそばに行って、将臣は困ったように肩をすくめた。

「……こいつは全く、どういうつもりで……」

呟きながら、出るのはため息ばかり。
目の前で仲良く熟睡しているのは、彼女と自分の連れであるはずの男。
その真横にしゃがみ込んで膝に頬杖をつき、将臣はあきれ顔で煮染めの端を囓った。

「明日の朝は起こしてね、っつっときながらこれかよ……これで隠せてると思う方がおかしいんじゃねーか?」

『花嫁の父ってのはこういう心境かねえ』と年齢不相応な感想を思い浮かべ、彼女の鼻を指で弾くと、その眉がわずかにひそめられた。
構わずペチペチと額を叩く。やがて、ううう、と苦しそうな呻きが洩れて、眉間の皺が深くなった。

「うー…やだ、ねみゅいの……まさおみくーん……」
「……………」

情けない声がそう呟いた途端、額を叩く手がぴたりと止まって。
ほんの少し驚いた顔をした将臣は、次の瞬間、一気に破顔した。
くくく、と声を殺して笑いつつ、彼女の頬を思い切り引っ張る。

。起きろって」
「……うー……ううううう、……まさおみ…くん…?」
「よ、おはようさん。今日は起こせっつったろ」
「………うん………」
「とっくに朝メシもできてんぞ。口開けてみ」
「あー…?」

素直に開けられた口の中に、将臣は残った半分の煮染めを放り込んだ。
もぐもぐと気怠げに口を動かした後、彼女の瞳がようやくうっすらと開く。

「……これ…なに?」
「朝メシのおかず。うめーだろ」
「うん……まさおみくんは……もうたべた、の?」
「だから起こしに来たんだろ。起きねえなら先に食うぞ」
「……じゃあ……おきるー……」

将臣の腕を掴んで、よろよろと身を起こす彼女をいつものように抱え上げて。
『結局こいつの面倒は俺が見るのかよ』と心中で呟くその表情は、決して満更でもなさそうに見えた。

 

END.

 

 

 

 

あのままでは臣があんまりなので、とりあえず裏設定を。
5日程度でラブ?になるのもアレですが、すぐ気づかれてるのもアレですね(笑)臣には何も隠せないのさ!
えーこのあとようやく覚醒した神子がはっと隣に気づいて「あ、あ、ああああのこれは!」とか言うんだけど臣が「んあ?なんだ?」とかふつーに返して、「……なんでもない」と言った神子が心の中で『ばれてない…?』とか思うんだと思います。知盛にどんな態度をしてても臣には常に素直な神子で。

でー二人が「今日のごはん、なんだろね〜」「なんかうまそうだったぞ」「えーどんなのがあったの?」「なんか揚げ魚のあんかけとか色々」「私あんかけ大好きー!うれしー!」「そう言うと思ったよ。知盛の分も食ってやれ」「そうだね!」とか言いながら去っていくのを聞いて、知盛が複雑な気分になるのかと(笑)