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「駄犬五題」
5 愛しくってしょうがない

 

 

うっすらと瞳を開けると、すぐ傍に彼の顔があった。


空が白む寸前の時刻。もともと朝の弱い彼は、今、まさに熟睡している時間だ。
気怠い腕を伸ばし、共有している掛け物をひっぱり上げて頭までかぶると、そこは二人だけの小さく暖かな空間になる。

「……平、知盛」

たった5日前には隣の自分を神経質そうに疎んじていた彼が、小さく呟いた声くらいでは目覚める気配はなくて。
刀の鍔でも鳴らせば起きるだろうか、と思って、私はくすくすと笑い声をたてた。


愛しいと思う。
もともと敵同士で、目的が同じだから同行しているだけ。とても仲間だなんて言えない。それどころか、私は今までに何度も彼を殺めている身だ。
この時空でたまたまこのような関係になってもそれは行きずりに近く、甘やかな恋愛という言葉には程遠い。
けれど。

恋しくも好きでもないけれど、いとしい、とは思う。


この先、もし戦地で出逢えば、私はやはり彼を斬るだろう。それぞれの護るものをかけて、刀を交わすだろう。
戦場で戦わない、という選択肢は、戦神子である自分の中にはなかった。
もしかしたら、それを変えることはできないのかもしれない。なにより知盛がそれを願っているのだから、それ以外の生を彼に教えるなど可能だとは思えなかった。
それでも。

「今、指で触れているこのあなたと、共に生きる道があるなら」

私は手を伸ばして、頬にかかった彼の髪を柔らかく掬った。

「それが、私の運命」

どこか別の時空の知盛ではなく、十日に満たない日々を共に過ごし、怒り、笑い、交わりあったこの男と生きる道を、私はきっと見つける。
自分も彼も、源氏も平家も犠牲にしない、唯一つの道をみつけてみせる。
それが、運命を切り拓く力を持った自分の使命だと決めたから。

「……バカな犬ほど可愛いっていうけど、あれって本当なんだ……」

堪えきれず笑いながら彼の頬をつねると、何も知らずにねむる知盛は少しだけ眉を寄せて、布団を手繰るように無造作にわたしを抱き寄せた。

 

END.

 

 

 

 

えーこれがオチでございます。
ゲームの知盛エンドを好きな方には申し訳ないのですが、アレ、私はどうも「違う……」と思ってまして。知盛はいいんですけど神子が……少なくともうちの神子はあんな選択はしない。

で、だったらどういう選択をするわけ?と思ったのがこれです。まず絶対熊野で一緒に過ごした知盛を選ぶと思う。それは私が知盛ルートを意識したのが熊野だったから、なんですが。でも同じ人だったらどの運命でもいいわけではないはず。
それぞれの時空で違う選択をしているからこそ運命が変わってくるわけだし、変わるのならまたそれを選ばなくてはならない。でもどうしても神子がわざわざあの(知盛エンドの)知盛を選択したとは思えない……むしろ自分が願望を押し通せたからこの知盛で終わった感が否めない。
でも、私がプレイした遙か3の神子は、「自分のものになる知盛がいる運命」ではなくて「この知盛が自分のものになる運命」を選ぶと思うのです。そのくらいはやってくれ、龍の神力もなんにも持たないせんせいすら「神子がただ生きている運命」ではなく「この神子と共に生きていく運命」に辿り着いたんだからさ!(せんせいもあの神子がいたから行けたんだろうけど)

あと、あのエンドだと、神子は知盛にいつ飽きられるかと内心ドキドキしながら過ごすような気がするのもあり(笑)
できればエンディング後には甘々になってほしいのですが、あれだけしか接点がなかったら知盛いつ飽きても不思議ではないような。台詞だって「おまえが俺を虜にする限り」とか条件付けしてるしさ。
そんな殺伐としたラブエンドは、個人的にちょっと避けたいのでした。

というわけで、うちの知神の神子には「全部の条件を満たす」ために茨の道を歩んでいただこうと。あきらめないでいただこうと。
どうやって自分のものにするかはまあ、神子が考えるということで(笑)