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  あたりまえの勇気 2 

「………っ!?」

達しかけていたがびくりと身体を硬直させる。
セイランはたいして動じなかったが、さすがに手を止めてそちらを見た。

「誰も入ってこないはずだけど」

泣きそうな少女をなだめるでもなく、淡々と呟く。
その余裕が崩れたのは、執務室に飛び込んできたらしい人物の声が聞こえた時だった。思わずキッとドアをにらみつけ、セイランはの体を引き寄せる。少女も不安そうにセイランにすり寄った。

「……寮の使用人から、帰ってないのを聞いたみたいだね。まず僕のところを疑ったのは賢明だと思うけど」
「や…、セイラン様。やだ、こんな格好……」

あわてて服を探すその態度に苛立ちを覚え、セイランはぐいと彼女を引き戻した。

「別に構わないじゃないか。続けよう」
「セイラン様!? やだ、やめっ……見つかっちゃう……!」

再び動き始めた指が、少女の過敏な箇所を刺激する。
わざとドアの方に向けて脚を開かせ、後ろから抱きしめた形でうなじに舌を這わせる。はあげそうになった声を必死で抑え、首を振った。

「いやぁ……あっ、……んん…ぁ……やめて、セイランさま……!」
「どうして? 見られて困ることでもあるの?」

困るに決まっている。今日は月の曜日、女王候補が休める日ではない。
しかも、前日の無断外泊を知られている上に試験の教官である彼とのこんな所を見られては、困るどころの騒ぎではないだろう。
だが、はその問いに答えられなかった。それは、訪れた彼にセイランが強い反感を抱いていることを知っているから。
そして、その原因が自分であることも……。

「今の君を見たら、彼はどんな顔をするかな。僕に調教されて、こんな卑猥な姿をさらして悦んでる君を見たら……。くくっ、見せてみたいね」
「やぁ……!」

少女の顔がみるみる赤らんでいく。そんなことはしないと分かってはいても、その光景を思わず想像してしまう彼女の身体から、新しい体液が流れていく。

「……何もかもすべて、見せてやりたい。君の心も体も、全てが僕のものだということを、あいつに思い知らせてやるんだ」

呟きに熱っぽさが加わったと同時に、まだ余熱の残るそこに指が当てられた。

「あぁっ……うっ……っく、は…ぁっ……っ」

唇をかみしめても、声が漏れてしまう。自らの口を押さえかけた手は後ろに縛られ、何ひとつ隠すこともできない。
執務室と私室をつなぐドアの向こうで、彼が何か叫んでいるのが聞こえた。

「……不躾だね。それが他人の部屋に勝手に入ってきた人間の態度かい?」

の裸体に愛撫を加えながら、セイランはドア越しにすまして答えた。
その言葉に少しひるみを見せた彼も、構わず詰問を返す。

「……? さぁ…ね」
「ひっ………」

うそぶきながら、ゆっくりと指を差し入れる。いきなり襲う激しい快感に、は小さく叫びをあげた。
縛られた手が苦しくて前のめりになり、自然、うしろの青年に秘部をさらすことになる。
顔をシーツに押しつけて必死でこらえる耳に、セイランの小さな笑いが聞こえたと同時に、物凄い圧迫感が彼女を貫いた。

「……ひぁぁっ!」

ぬめる体液の助けを借りて侵入してきたそれは、もう苦痛ではなかった。
だが、その代わり奥にずくんと当たる衝撃はすさまじく、一瞬にしてなにも判らなくなる。入れられているそこだけがあつい塊になったようで、は全身で反応を返した。
あの方に聞こえちゃうとか、腕がつりそうとか、そういう冷静なことを考えている自分も見えないところにいて。
でも、それ以外の見える自分は、何もかも全部セイランの動きに支配されてしまっている。

「……!………!!」

何を叫んだのか、それとも何も言えなかったのか、覚えていない。
ただ、後ろから抱きしめてくる腕と首すじに口づけられる感触だけが、妙に生々しく感じられて。

「あぁっ……ひ…………っい………!」

気がつくと、は自ら意識を手放してしまっていた。

 

◇     ◇     ◇

 

ふと瞳を開けると、薄暗いままの室内で人の気配がした。

「…………セイ…ラン、さま?」

呟いてから、はっと気付く。もしかしたら違うかもしれない。
もしも、あの方だったら……?

「ああ。大丈夫かい?」

しかし、答えたのは少女の期待した声だった。
ほっと息をついて、はゆっくりと体を起こした。

「大丈夫です。ちょっとだるいけど、でも平気」

その答えにくすくすと笑いながら、青年は冷たい飲み物を彼女に渡した。

「君は、どうしても僕に気を遣うんだね。乱暴されてるのに、その相手を庇うなんて……その卑屈さは軽蔑に値するよ」

冗談に見せかけた目が、真摯にきらめく。

「好きだからって何もかも許容してしまうような、プライドの無いことがよくできるよね。僕だったら考えられないけど」
「え? …でも」

少女は驚いたように彼を見据え、首を傾げた。

「何もかも許容してる、なんてつもりないですよ?私だって、セイラン様が浮気したりとか……逆に、私を好きじゃなくなったのに嘘をついたりしたら絶対許しませんけど。
 でも、少なくとも今はそうじゃないでしょう?」

恥ずかしそうに、あの眩しい笑顔で。

「あなたは私のことが好きだから。セイラン様は私のものです」

だから不安になったり疑ったりする必要はないのだと、言外に言われた気がして、セイランははっとした。
そして初めて、不安だったのは自分の方だったことに気付く。

少女が本当に自分を好きでいてくれるのか不安で、その言葉さえ疑って。
でも気を抜くと彼女の機嫌をうかがってしまいそうな自分が嫌で。
無理矢理にでも従わせなくては気が済まなかった。

「……ふ……はははっ、、君はほんとうにすごい子だよ。
 この僕にそんなことが言えるなんて」
「セ、セイラン様??」

いきなり吹き出した青年を、が驚いて見つめる。

「な、なんですか。私、何かおかしいことを言いました〜?」

おろおろとうろたえる少女の唇に、セイランは笑い続けながら優しいキスを落とした。

「君のものであることを……誇りに思うよ、


まるで少年のような、素直な瞳で。

FIN.

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